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今日は国際腐敗防止デー

Wikipediaによれば日本語では「国際腐敗防止デー」というのだそうですが、ちょっとピンと来ない感じ。スペイン語ではDía Internacional contra la Corrupción、汚職防止デーと言う方がわかりやすくないですか?腐敗だったら食べ物が腐っていくような感じじゃないですか。もっとも汚職は腐敗の一部、というのが定義なんだそうです。

それはともかく、国連は2003年に「腐敗の防止に関する国際連合条約」というのが制定され、12月9日が国際腐敗防止デーと決まったんだそうです。

この腐敗防止デーが今年はグアテマラで何やら賑やかになっています。検察庁にはCICIG(グアテマラの無処罰問題対策国際委員会)と協力して近年大きな政治家・企業家の汚職を摘発してきた無処罰問題対策特別検事局(FECI: Fiscalía Especial contra la Impunidad)というのがあります。最近では大金が詰まった22個でしたっけ?のスーツケース事件の摘発なんかもしていますが、その局長フアン・フランシスコ・サンドバルはCicigなき後のグアテマラのダークサイドの恨みを一身に買っているのでありますね。

ここに大ボスとしてサンドバルを打倒しようと登場するのが検事総長コンスエロ・ポーラス。何とかサンドバルを排除しようと、以前から受けていたくだらない告発を大々的に取り上げ、わざわざ特別検事を任命したのが昨日のこと。ところが、この特別検事が例のスーツケース事件の容疑者と目される元通信省長官ホセ・ベニートの顧問であった人だったものだから大問題。当日の内にこの特別検事の任命を撤回することとなったのでありました。

コンスエロ・ポーラスって、前職は憲法裁判所の予備判事だった人、つまりグアテマラの法曹界ではトップレベルの人のはずなんですが、こんなアカラサマすぎる人選なんて、お粗末すぎませんか。大ボス失格。

こうして、グアテマラきっての名検事を闇に葬ろうとするダークな検事総長には、明日抗議デモが行われることとなりました。政界財界法曹界に跋扈するダークサイドの力は根深いものがあり、ポーラスが検事総長を辞めることはないでしょうし、辞めたとしても後任を選出するのが大統領という現在のシステムではまたダークサイド寄りの人物になってしまいそうですよねぇ。

とりあえず、そんなこんなことがありまして、腐敗防止デー。当然のようにサンドバルに対する応援メッセージのあふれるSNS界隈となりました。

これ、人権擁護庁のトップ、ホルダン・ロダスとサンドバルのツーショットなのですが、何とよく似ているの、この2人。左がロダス、右がサンドバル。ダークサイドへの抵抗勢力のリーダー的2人です。いろいろな横槍や邪魔や嫌がらせや圧力に、変わらぬ不屈の姿勢を見せ続けているこの2人、本当に基調な人材なのですよねぇ。

史上最高の押収額

今日のグアテマラ的ビッグニュースはこちら。

無処罰対策特別検察局(FECI)はグアテマラ史上最大の現金を押収、その額Q122,351.456.60。アンティグア市の家にあった22個のスーツケースにはケツァル、ドル、ユーロ現金がぎっしり詰まっていた。

キャプション通りなのですが、アンティグアのとある家屋に踏み込んだところ、住人は不在だったもののスーツケースがごろごろしていたので、開けてみたらドルやらユーロやらがざっくざくだったという。総額はケツァル換算でQ122,351,456.60。

日本円にすると1,658,615,657.62円。16億58561万5657円(小数点以下切捨)ですよ。16億円のゲンナマが22個のスーツケースにびっしりつまって空き家に置かれていたのだそうです。札束数えるだけで何時間かかったのこれ。

検察局はこのお金は前政権の誰かが賄賂として受け取ったお金だと見て捜査を行っている模様です。

あるところにはあるものなのね、お金。このお金が必要な人のところにちゃんと回るようだったら、グアテマラももう少しマシになるのかもしれないけれど、どこかの腐った政治家が全部自分のフトコロにおさめてしまうんだものなぁ。こうして金持ちはより金持ちとなり貧者は更にむしられてゆき、チマルテナンゴバイパスは相変わらず雨が降るとガラガラと崩れていくのでありますね。

やれやれ。

魔法の水事件判決

昨日19時に言い渡される予定だった判決は、結局今朝5時とか6時とか、そんな時間になったそうです。裁判官もお疲れ様だけれど、関係者の皆さんお疲さま。

さて、通称「魔法の水」事件。グアテマラシティの南にアマティトラン湖という、グアテマラシティやビジャヌエバ、ビジャカナレス、サン・ミゲル・ペタパ、サンタ・エレナ・バリーヤスといった周辺都市の下水というか汚水がどんどこ流れ込む湖があります。グアテマラの場合、自治体に下水処理施設というものが存在しておらず、各戸が浄化槽による処理をする程度。浄化槽が存在していない家、つまり、垂れ流しってところもまた多い上、家庭の排水に加え、下水処理をする義務があるはずの工場の排水すらも垂れ流し。

そりゃあなた、汚れない方が無理ってものでしょ。。。

Lago de Amatitlán

波も静かなアマティトラン湖ではありますが、雨季になるとゴミがわんさか押し寄せるのも、年中濁っていてなんだか臭いような気がするのも、むべなるかな。この湖、一部温泉が湧いていまして、マヤの時代にはこの周囲に集落があったことも確認されている上、湖の中から陶器も発見されているんですけれどねぇ。。。

そんなアマティトラン湖の浄化に乗り出したのが、愛国党政権。当時の副大統領ロクサナ・バルデッティ自らが指揮をとり、「アマティトラン湖の浄化と水質改善のため」に一般競争入札を行います。2014年11月、M.ターシック・エンジニアリングという会社が1億3780万ケツァル(約1800万ドル)でこれを落札。その中には「湖の水質を改善する」という23,000リットルの薬剤、つまり「魔法の水」が含まれていました。

その頃、この話がラジオで取り上げられていたのを覚えています。確かAMSA(アムサ、アマティトラン湖流域維持管理局、とでも言えば良いのかな)の人が出ていて、この「魔法の水」のことを話していたのですね。私が覚えているのは「もう何年もアマティトラン湖は放置されてきた、今回やっと何とかしようという動きが出てきたのだから、試させて欲しい」「この薬品は他の国(イスラエルではなかったか)で使われており、効果が確認されている」などと話をしていたことでした。リスナーが「一度に大量に購入するのではなく、最初に少しだけ買って試してみたら良かったのに」とメッセージを送っていたような。うん、これとってもごもっともな話です。

2015年バルデッティも参加して、華々しく「アマティトラン湖浄化のための魔法の水散水式」が行なわれました。バルデッティはこの時「私はこの湖について直接責任を負っているわけではないが、この湖が沼にならないよう支援している。浄化には30年必要だろう、今日がその最初の一歩だ」などと宣っておられたのでした。

一方、そんな上手い話があるわけがないと眉につばをつけた人たちは、大学に魔法の水を持ち込み、分析を依頼します。数大学が参加した分析の結果、この水の成分は「松、ニンニク、海藻の抽出物、過酸化水素水、エタノール」であることが確認されました。これで1800万ドルですよ、どこからどう見ても詐欺じゃありませんか!!!

そして実際詐欺だったのでした。化粧品もびっくりの脅威の粗利率だと思われるこの製品、早い話が利益は皆で分け合おう、という話になっていたのでした。そして逮捕されたのがロクサナ・バルデッティを含む13人。

ハイリスクC法廷で行われたこの裁判、バルデッティ以外は割と素直に罪状を認めていたような。そのお陰なのだと思いますが、バルデッティの抵抗にもかかわらず、裁判が割とさっさと進んだのでした。

さて判決。

  • ロクサナ・バルデッティ(副大統領):懲役15年半(共謀8年、詐欺5年、影響力行使2年半)
  • マリオ・バルデッティ(副大統領の弟):懲役13年(共謀6年、詐欺5年、影響力行使2年ー1日辺りQ100で減刑可)
  • パブロ・ゴンサレス:懲役12年8ヶ月(共謀7年8ヶ月、詐欺5年)、収賄については無罪、マネーロンダリングで再捜査命令
  • ホルヘ・かハス;懲役11年(共謀6年、詐欺5年)
  • マリリン・ソサ:無罪であるものの、マネーロンダリングについて再捜査命令
  • ルベン・トーレス;無罪であるものの、マネーロンダリングについて再捜査命令
  • エドビン・ラモス:懲役3年(義務不履行)、詐欺については無罪
  • フアン・ディアス:懲役12年8か月(共謀7年8ヶ月、詐欺5年)、収賄については無罪であるものの、マネーロンダリングで再捜査命令)
  • セルヒオ・マロキン:無罪であるものの、マネーロンダリングで再捜査命令
  • アラン・デ・レオン:懲役11年(共謀6年、詐欺5年)
  • リスベス・アロンソ:懲役12年8ヶ月(共謀7年8ヶ月、詐欺5年)
  • サンドラ・ガルシア:懲役12年8ヶ月(共謀7年8ヶ月、詐欺5年)
  • ウリィ・ロイトマン:懲役11年(共謀6年、詐欺5年、贈賄については無罪、マネーロンダリングで再捜査命令

3人が無罪、10人が有罪。バルデッティに対する求刑は懲役22年でしたから、それから比べれば刑期は3割減ですが、15年の懲役刑ならまずまずという感じがします。というか、減刑なしの懲役刑となったのは大きい。今後の汚職捜査についても、流れを作ってしまうかもしれません。

バルデッティ辺りはこうやって私服を肥やし、不動産を次々と購入していったのですね。それらの不動産は現在国有財産となっていますが、何にするんだろう?

こうして汚職政治家はちらっと浄化されていますが、かわいそうなのはアマティトラン湖。折角の浄化だったのに、蓋を開けてみればつまらないただの水。その後は誰も関わりたくないようで、完全に放置されています。

このままだと30年後には沼になっているんじゃ。。。

追放の地から

ライト・ライブリフッド賞というのは「現在のもっとも切羽詰まっている問題に対し実際的模範的な回答を示した人物・団体」に授与される国際的な賞で、「第2のノーベル賞」と呼ばれることもあるそうです。もっともそれはスウェーデンの財団が創設した賞だからなんじゃないかと思いますが、ノーベル賞との関係はないそうです。

そのライト・ライブリフッド賞の2018年の受賞者として前検事総長テルマ・アルダナとCicigのコミッショナーであるイバン・ベラスケスが選ばれたと今朝方ニュースが伝えていました。グアテマラの汚職追求に対する仕事が評価されたもの。

オットーさん、こんなところで名前出されても嬉しくない。。。よね?

どうやらこのコンビは高い評価を得ているようでありますね、グアテマラ以外では。「預言者は自分の故郷では歓迎されない」ってアレと同じようなもの?

相変わらず、グアテマラ政府はイバン・ベラスケスの入国についてはコメントしていません。「まだ帰ってきてないんだから、まだ起こってないことについては発言できない」なんだそうで、ああ言えば上祐的な何かなのか、こいつら。

そのイバンは、追放の地ニューヨークで今日こんなツイートをしています。

今日、Cicigの事務所前にバス7台に乗って多くの人たちがやって来ました。何でも「環境省で植林の作業をやる人を探しているから」と言われてバスに乗り、到着したのがCicig前だったと。何だ、Cicigの前に森作るのかい。

という話ではなく、どうやらCicigへの抗議デモをするために寄せ集められた人たちだったようです。「環境省」という話の他にも「ヨーロッパからの経済的支援」「道路掃除」なんてのもあったとか。

イバンのツイートは画像を消した音声だけのものですが、それに付いている文章は「必要としている人を欺いて貶め、利用するというのは、この悪意のある行為の首謀者のモラルの程度を示すものだ。哀れな」と、イバンの腹の底にふつふつと怒りが沸いているのが感じられるような文章です。

環境省は「無実だ」と言ってますが、さてどうなんでしょう。

実際、政府主導でジミー擁護のデモ行進が行われるという話があり(公務員は強制参加)、それ以外にも県知事が市長らにデモ行進を要請しており、サンマルコス県では市長が「そんなことに使う金はない」と反発しているのが報じられています。グアテマラの場合、知事は大統領が任命するので、知事が大統領べったりなのは不思議なことはないのですが。

そうそう、そう言えばその大統領、国連事務総長と10分間のアポを取り付けたそうです。さて、何の話をするんでしょうね。

アウトゴール

今日の主だったニュースは今のところ2つ。

1つは外務省からの「新しいCicigコミッショナーリストを至急送れ」という一方的な通告に対し、国連は「コミッショナーを変える理由がない」と軽く一蹴したのみならず、「コミッショナーは(グアテマラにいることができる)補佐を任命することができる」と付け加えてきたのでありました。政府的にはオウンゴールだよね、これ。

この補佐の任命権はイバン・ベラスケスにあるというわけで、当然SNS界隈は「テルマ・アルダナ(前検事総長)」「フランシスコ・リバス(前内相)」「フランシスコ・フォッパ(前国税庁長官)」などなどと姦しい。誰がなるのか、楽しみだな。

もう1つは、9月16日の憲法裁判所の「Cicigコミッショナーの入国を妨げるな」という決定に関連します。この時の決定が「イバン・ベラスケスの入国を妨げるな」と名指しではなく「Cicigコミッショナーの入国を妨げるな」というものだったため、大統領とその仲間は「イバンの馬鹿はもうコミッショナーじゃないからさっさと次を任命しろ」という無茶苦茶な(というか必死な)要請を行っていたわけですが、これについて、「コミッショナーとは誰の事を指しているのか明らかにしてほしい」という保護請求が再度提出されていました(まったくもう面倒くさい人たちだな)。

当然といえば当然なのですが(理解できないのは大統領とそのお友達だけ)、憲法裁判所は「コミッショナーであるイバン・ベラスケスの入国を妨げてはいけない」と当該コミッショナーは誰なのかを確認しております。「この決定に従わない場合は、法的措置が取られる」とこの点もクリアーにしています。

さて今度こそ、イバンは帰って来られるのでありましょうか。

それ以外では、昨日フランシスコ・サンドバル検事がサンドラ・ホベル外相について「私には告発義務がある」と検事総長に訴え出た件は、検事総長が担当検事局(昨日夜だったので、当番検事局でしたが)に送り、そこから公務員犯罪検事局に転送されて捜査が開始しています。

また、16日の憲法裁判所の記者会見席上、その場にいる新聞記者らの写真を携帯で撮っていた女性がおり、問い詰められて「テレビ局で研修をしている」などと言いのがれていたのにその場から逃亡、憲法裁判所の警備に当たっていた警官らがその女性を通したことから警察官ではないかと疑われていました。なお、この人物は外に出るとナンバープレートのないバイクで走り去ったのですが、肝心の携帯を落としてしまい、現在これも検察が捜査を行っています。

この事件で、今日内務省次官が「あれは憲法裁判所から警備を頼まれていたからだよ」というまったく意味不明の弁明をし、憲法裁判所から「ウチが頼んだのは外の警備だってば」と反論されているという有様。でも、これって逆にあれは警察官だったってことを認めたことになるんじゃ。。。近頃の警察官ってのはナンバープレートのないバイクを乗り回しているものなんですかねぇ。

もう一つ付け加えておいた方が良さそうなのは、昨日朝、閣議が行われたのですが、この時「Cicigを廃止する」という閣議決定が合意されたという噂があること。副大統領のハフェット・カブレラは閣議決定の存在を否定していますが、噂によれば、この閣議決定はやはり昨日の朝アメリカから流れてきた「マヌエル・バルディソン(元大統領候補)がマネーロンダリング容疑でFBIに逮捕された」というニュースにビビってお蔵入りになったのだとか。いかにもチキンなこの政府ならありそうな話すぎて、本当にしか思えません(笑)

バルディソンはグアテマラ国内での汚職容疑(オデブレッチ事件)で逮捕命令が出ていますが、ニカラグア経由でアメリカに逃れようとしたところ、アメリカのビザが失効していて不法入国として逮捕。当初は政治的嫌がらせを受けていると亡命申請をしていましたが却下され、本当なら先週のうちにグアテマラに強制送還されているはず、でした。それがどこでどうしたのか、送還が延期となり、気がついたら逮捕されていたという。これがグアテマラに対する警告だったというんですよね。

実際問題として、あの憲法裁判所の決定を理解できなかった人たちに、こんなわかりにくいメッセージが伝わるのかと言われると甚だ疑問ではありますが、アメリカ様のおっしゃることには妙に素直なのもまたこの政府の傾向ではあります。国連には歯向かうけれど。

そして明日20日は、大学生らの呼びかけによるデモ行進が行われます。他の大学の学生(大学ではなく)や一部学校、商店などもこれに呼応し、首都のみならず地方都市でもやはりデモ行進が行われる予定。

それに先立ち、サンカルロス大学の学生らが防衛省、検察庁、最高選挙裁判所の前でデモしておりました。検察庁と最高選挙裁判所の前にいたのは、小僧が所属する工学部のリーダーたちであった模様。

この制服というか、KKKのようなこのスタイル、私は好きではないのですが、アイデンティティーを隠す内戦時代の遺産です。黒とグレーのツートンカラーが工学部。工学部生ならみんなこの覆面をしているというわけではありません。一部の学生が参加している部活的なものとでも言ったらわかりやすいですかねぇ。

笑っちゃったのが、最高選挙裁判所(TSE)では先方から「話を聞くから中に入って」というまさかの対応にあい、数人がゾロゾロと入っていくとちんまり座って対話をしていたという。その写真、なんとも笑えます。TSEやるな(笑)

おまけ。先々週だったか、こんな夢を見たことがあります。見たというか、ラジオのように映像がなくて音声だけ、でもクリアーに「モラレス大統領の辞任の後 (tras la renuncia de Presidente Morales)」と聞こえたのでした。目が覚めた時、これって本当のこと?と一瞬思ったくらい明瞭だったのですが、果たして正夢になるのか。

グアテマラシティで行われるデモ行進のルートはこちら。

アルコール禁止、政治的プロパガンダ禁止、覆面禁止、武器禁止、塗料禁止。守られる気が止ない(笑)

なお、宿題が溜まっている我が家の大学生は明日は「行きたいけれど。。。」だそうです。

政府の出方が心配ですが、参加する人たちにとって、暴力行為の一切ない、良い1日となりますように。

Vergüenza ajena(他人の恥)

タイトルは「ベルグエンサ・アヘーナ」と読みます。スペイン語の権威であるスペインの王立スペイン語アカデミーによれば、「他人の言行を恥ずかしく思うこと」。ピタリと来る日本語訳が思いつかないのですが、大体そういう意味。ここら辺だとPena ajena(ペーナ・アヘーナ)という言い回しも同じ意味で使います。

何が言いたいかと言うと、グアテマラ人じゃない私の目から見て、ここの大統領やらのやってることは全くこのvergüenza ajenaだな、と。大統領はともかく、ここ数日間毎日のように記者会見をやってる外相サンドラ・ホベルは、国連憲章はおろか、国際条約とかCicig創設に関する国連との合意も読んでないんじゃね?という感じで、ツラの皮が厚いというか厚顔無恥というか、恥知らずというか、恥さらしというか。こんなのが外相だなんて世界中の笑いものだわ。

まず、Cicigの創設に関する合意における、「問題が発生した場合には両者間の話し合いで解決する」というのを全く無視し、「グアテマラ政府としては、イバン・ベラスケスはもうCicigコミッショナーではない」と一方的に宣言しちゃい、国連に対し「48時間以内に次のコミッショナー候補のリストを出せ」と迫ること。コミッショナーの任命は国連事務総長の専権事項と定められており、グアテマラ側には口を挟む余地はありません。

CicigはもともとCiacs(Cuerpos Ilegales y Aparatos Clandestinos de Seguridad: 闇の治安維持部隊)の捜査のために設立されており、この種の闇部隊は政府や政府機関の中にいるとされていましたから、政府関係者がコミッショナーの任命に口を出すたらダメでしょ、ってことなんです。実際、最近カイビル隊が市街地で警備に当たったり、国境で麻薬捜査に当たってるはずのジープがCicig付近で嫌がらせをしているのを見ると、ナルホド、こういう事件を捜査するためにCicigは必要なのだな、と再確認しちゃったりするのでありますね。

そして国連憲章100条には:

1. 事務総長及び職員は、その任務の遂行に当って、いかなる政府からも又はこの機構外のいかなる他の当局からも指示を求め、又は受けてはならない。事務総長及び職員は、この機構に対してのみ責任を負う国際的職員としての地位を損ずる虞のあるいかなる行動も慎まなければならない。

2. 各国際連合加盟国は、事務総長及び職員の責任のもっぱら国際的な性質を尊重すること並びにこれらの者が責任を果すに当ってこれらの者を左右しようとしないことを約束する。

と記されており、事務総長に「48時間以内に回答しろ」と要求することがそもそも理不尽であり、事務総長的には返事をする必要すらない事項に該当するのだそうです。

つまり、グアテマラ政府の一人相撲というか一人不条理劇。観客側の私としては、仮にも「外相」という立場の人が、いけしゃあしゃあとというか、厚顔無恥にもというか、そういう決まりをさらっと無視してしまうので、私の常識では理解できず、「はあぁあぁあぁあぁ?」と戸惑っている間にコトが進んでしまって余計に戸惑ってしまうという。

このようなあまりにも恥ずかしい外相の言いたい放題に怒ったのがフランシスコ・サンドバル検事。サンドバルは無処罰問題特別検事局長、つまりCicigと実際にタッグを組んで事件の捜査に当たっている検事局のトップです。

サンドバルは本日、検事総長のコンスエロ・ポーラスに請願書を送っています。

これは、先日ホベル外相が「Cicigは何年もいるクセに、結果を出していない。ローセンベルグ事件がそのいい例だ。バルデス・パイス兄弟は8年も拘留されていたのに無罪となった、Cicigはメディアを利用して情報を操作し、市民を恐怖に陥れている」と発言したことに対するもの。ローセンベルグ事件は2009年グアテマラシティで殺害された弁護士ロドリゴ・ローセンベルグが、その前に自分の死を予告するビデオを撮影していたということでセンセーショナルなニュースとなりました。2008年1月に発足したCicigはこの事件の捜査に参加しており、数ヶ月後「この事件は自分の殺害を仕組んだローセンベルグの自殺だった」という、天地が引っ繰り返るような結論を出してくれたのでありました。

長い前置きはともかく、サンドバルは「外相はパルデス・パイス兄弟が8年拘留された後無罪となったと言ったが、実際に拘留されたのは3年であり、またこの件は現在上級審で係争中で無罪が確定したわけではない」「逮捕された13人のうち、9人については有罪が確定している」と主張、このような事実と異なる発言は検事局及びCicigに影響を及ぼすものであるから、「外相の発言の内容の確認」と「刑事訴訟法第298条の適用」を求めています。刑事訴訟法第298条は「告発義務」について記された部分で、多分その1項「職務遂行の際に違法行為を見聞した公務員は、秘密保持義務がある場合を除き、告発する義務がある」というところを指しているのだと思います。

こうして、やっとここに唖然としているだけではない人が登場してくれたのでありました。サンドバル以外にも、人権擁護官のホルダン・ロダスおじちゃんや市民団体らはホベル外相とエンリケ・デゲンハート内相の更迭を求めて憲法裁判所に保護請求を出しています。

いろいろとてんやわんやですが、20日に予定されているデモ行進には、サンカルロス大学生の他、ラファエル・ランディバル大学、デル・バイェ大学らの学生、国立病院の医師らが参加を表明しています。

というところで、明日につづく。

大統領の反逆

ジミー・モラレス大統領とその仲間たちは、昨日の憲法裁判所の決定に従わないことにしたそうです。

曰く、「グアテマラ政府にとって、イバン・ベラスケスはもうCicigコミッショナーではない」「国連には48時間以内に新コミッショナー候補のリストを寄越すように要請している」「国連がこの要請を無視し、何かがあったら、それは全部国連のせいだ」、とまぁ、こんな感じでしょうか。

あらまぁ、徹底的に嫌われているのね、イバン。

でもですよ、国連側はCicigのコミッショナーはイバン・ベラスケスだと言っていますし、何よりもCicigのことで両者間の意見の相違があった場合には「話し合いにより解決する」、つまり「両者間の合意が必要」なわけで、グアテマラ側が一方的に「イバンはもうコミッショナーじゃない」とクビにすることはできないのでありますよ。

これが今日の記者会見。左から内相エンリケ・デゲンハート、外相サンドラ・ホベル、行政庁長官ホルヘ・ドナト。ジミーを支える三馬鹿、じゃなかった、閣僚2人とおまけ1人です。この人たちのスペイン語能力はどうやら私より低そうだ。。。

憲法裁判所の命令に従わない場合、不服従で刑事罰の対象となります。ただし、検事総長のコンスエロ・ポーラス(元憲法裁判所補欠判事)は、現在の状況で検察が捜査を開始することはない、命令への不服従があったかどうかを判断するのは憲法裁判所であり、憲法裁判所からの通告があれば、これについて捜査を行うと記者会見で話していました。なかなか慎重な方らしい発言です。

受け身の姿勢に納得していない人たちは、検察に「大統領とその仲間の不服従」を告発していますが、さて、これについてはどうするんだろう。

ちなみに、国連の方からのリアクションは一切なし。アホらしくて付き合ってられん、てこと?

今週の木曜日にはサンカルロス大学の学生協会(AEU)が大統領と副大統領の辞任を求めてデモ行進を行うことになっていますが、ゼネストの呼びかけも行われているようです。

以前、オットー・ペレスが辞任した時、あの時のデモ行進では学生のみならず、商店も次々と店じまいをしてデモに参加、最終的には経済界をも巻き込んで大きな流れとなったのでした。

現在、グアテマラの国内各地で「ジミー辞めろ」の声が高まっていますが、大規模なデモ行進に対しては、政府は強硬策を取るでしょうし、扇動者を忍び込ませて暴力をふるわせ、火器や強権力の使用を正当化してしまう可能性もまた高い。そうすればニカラグアの二の舞です。

まあしかし、ジミーが必要に無理矢理コミッショナーを変えろというのが成り立つのなら、大統領変えろって理屈も成り立ちそうだな。本当に往生際が悪いったらないけれど、選挙で選ばれたってだけでありとあらゆることを正当化できてしまう大統領制というのもまた制度不良を内包しているのですよね。

だからこそ、ちゃんと考えて大統領を選ばないといけないわけですが。