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カルロス・ルイス・サフォン「天使のゲーム」

サフォンの「忘れられた本の墓場」シリーズの2作目。1作目の「風の影」はあっという間に読了したのですが、こちらは2ヶ月強かかりました。1作目よりページ数が多いのも事実ですが、前半は物語がゆっくり進むので、ちょっと退屈だったのでもありました。後半はテンポも早く、次どうなるんだろうとハラハラドキドキの展開になるのですが。スペイン語のタイトルはEl juego del ángel。

この作品の主人公はダビッド・マルティン。母は家を出、新聞社の警備員を務める父と暮らしていたもののその父も亡くなり、作家のペドロ・ビダルの庇護を受ける。ペドロに作家としての才能を認められたダビッドは、ペンネームを使って本を書くようになり、憧れの塔のある家に住み始める。そんなある日アンドレアス・コレッリという人物から「自分のために作品を書いてほしい」という依頼を受けて、引き受ける。その日からダビッドの周囲には不穏な事件が起こるようになり、彼の人生の歯車が狂い始める。

ゲーテのファウストを思い起こさせずにはいられないプロットではありますが、関わる周囲の人のほとんどが不幸になっていくというストーリーは読んでいて辛い。主人公が作家という設定からして、一体どこまでが現実で何が真実で、何がどうなっているのかが、最後まで謎のまま。そういう作家のゲームに私達がつき合わされてしまったのだろうかと、キツネにつままれたような感じの読後です。もっともこの「忘れられた本の墓場シリーズ」は4部作だそうですから、最後でその謎もとけるのかもしれない。そうだといいな。。。

前作の「風の影」は禁断の愛を中心にすえた物語で、すっと話に入りやすかったのですが、「天使のゲーム」は中心がコレッリから依頼された作品の話なのかと思えば、途中からダビッドが愛して止まないクリスティーナが物語の中心に取って代わります。でもクリスティーナはダビッドを愛しているのにペドロと結婚するという選択をしたので、不倫なんですよね。ファウスト+不倫という組み合わせで、物語の軸がきっちりしていないために(わざとなんだと思うのだけれど)、ご都合主義的かつ消化不良な感じは否めません。

それでも面白いか面白くないかと言われれば、面白かった!ダビットとこの物語を救っているのがダビッドの助手であるイサベラ。彼女なしにはダビッドは最後まで持ちこたえられなかっただろうな。

これに続く3作目、「天国の囚人(El Prisionero del Cielo)」も読みたいのですが、この前書店に行ったら売り切れてました。。。クリスマスの間に売れちゃったのかな。「天使のゲーム」を買った時に一緒に買って置けば良かった。再入荷するまでしばらくの辛抱です。その間にこの前ゲットしたエドゥアルド・ハルフォンの「ポーランド人のボクサー(El Boxeador Polaco)」を読もうかと思ってます。