Category Archives: 乾燥回廊

2つのグアテマラ

スペインの新聞エル・パイスのデジタル版より。

「グアテマラは2つある。そしてこれは食べない方のグアテマラだ:この中米の国の住民の23.4%は基礎食料バスケットに必要な収入をえていない。気候変動が収穫に多大な影響を及ぼしている農村地域では事態は深刻だ。これは飢えるグアテマラである」。

このツイートの写真をクリックすると本文記事に飛ぶので是非ご覧頂きたいのですが、グアテマラでも特に深刻な子どもたちの栄養失調が起こっている東部の乾燥回廊地帯、チキムラ県のカモタンとホコタンの農村地域。2012年以降、毎年のように降水量不足のために農作物が不作となり、特に乳幼児の栄養失調が深刻となっている地域です。

度々書いているように、首都圏を含む中部や西部は9月後半から10月にかけては多雨、ただし雨季の前半は少雨傾向でしたから、決していい気候であったわけではないのですが、まあそれでも何とか。枯れてしまったトウモロコシ畑や実の入らないトウモロコシの穂は、何とも悲しい写真です。

ではありますが、貧しい家族の写真でありながら、何ともほんわりと暖かな気持ちになるのは、笑顔があり、その日その時をしっかり生きている人達がいて、そういう姿を写真がしっかりとらえているからなのではないかと。中の人たちを応援したくなる写真です。

19枚目、ホコタン栄養改善センターの医師は「毎年100人くらいの子どもたちがここに来ます。ここにやって来るのは中度・重度の影響失調の子らですが、家の近くで治療を受けていたけれど状態が良くならないのでここにやって来る子もいます。今年は増えていますね。ベッド数は15床なのですが、ちょっと定員オーバー状態です」とコメントしています。家を離れて子供を連れて来るだけでも大変ですが、入院する子に付き添って家を何日もあけざるを得ないのもまた大変なことです。

それでもこのセンターや様々な団体の支援により、栄養失調が改善される子らもいるのは嬉しいことです。それが20枚目、最後の写真。タンパク質不足によりクワシオルコルを発症し足が腫れて歩くことも困難だったそうです。父親の付き添いで1ヶ月間入院しほぼ回復、もうそろそろ退院できそうなエルサちゃんとお父さん。いい写真です。

環境省、大手7社を訴える

5月9日、環境省長官のシドニー・サムエルズは、「(コスタスールの)川の水を引き込んで流れを変えた」としてアブラヤシやサトウキビなどの農場を経営する7社を検察に告発したことを明らかにしました。

告発されたの次の7社。

  • インヘニオ・マグダレーナ(Ingenio Magdalena, マリオ・レアルさん所有のサトウキビ農場)
  • グルーポ・ハメ(Grupo Hame, お馴染みウーゴ・モリナさん所有アブラヤシ農場)
  • インヘニオ・ラ・シエラ(Ingenio La Sierra, サトウキビ)
  • インヘニオ・パンタレオン(Ingenio Pantaleón(エレーラ一族が所有するグアテマラ最大のサトウキビ&製糖業者)
  • インヘニオ・パロ・ブランコ(Ingenio Palo Blanco, サトウキビ)
  • フィンカ・ラ・バナネラ(Finca La Bananera, バナナ)
  • パルマス・デ・オリソンテ(Palmas de Horizonte, アブラヤシ)

川の水を自分の農場に引き込み、下流域の水を涸らす原因となった、ということのようです。対象となっている川はマードレ・ビエハ、パカヤ、ナウアラテなどで、川の引き込みは50ヶ所以上確認されているそうです。

告発の根拠としているのは憲法127条。憲法なのかいっ!とちょっとびっくりというか、他に根拠にできるものがなかったということなのでしょうか。曰く、「水について:すべての水は公有の財産である」、つまり共有財産であるが故に、誰かが一方的に利用することはできないと解釈しているらしい(ちょっと無理筋)。

訴えた相手はグアテマラ国内の財閥なので、これだけでは裁判になったとしてもうまくいかないような気はします。ただし、今まで何らアクションを起こすことのなかった環境省が動いていること、そして大企業をとりあえず訴えたことで、水の利用について一定の自制が働いてくれればいいのですが・・・。

水資源の利用に関する法案は次々と国会に提出されているようですが、この先成立するのかどうかはまだ不透明です。

とりあえずは環境省に喝采を送り、今後の法案と告発の行方に注目したいと思います。

エルサルバドルの水不足

お隣のエルサルバドルは、国全体がすっぽりと中米乾燥回廊の中に入っている国ですが、そのエルサルバドルが本日、水不足による非常事態を宣言しました。

グアテマラの場合、水道を管理するのは各市なのですが、エルサルバドルではANDA(Administración Nacional de Acueductos y Alcantarillados)という政府機関が国内全域を担当しています。今回の非常事態宣言はANDAが大統領のサンチェス・セレンに要請して宣言されたものであるようです。

この非常事態宣言で、緊急対策費として350万ドルの予算がつくのですが、この資金は当面給水車の購入とレンタルに当てられるとか。とりあえず雨季になって雨が降り始めて何とかなるまでの急場を凌げればいいってことなんでしょうか。

何でも、エルサルバドルでは4年連続して旱魃(=降雨量の減少)が続いており、更に土地の舗装が降雨が地面にしみこみ地下水となることを妨げているのだそうです。たとえば、首都圏にあるソヤパンゴ市のアルタビスタは38,000戸の住宅を擁する大きな住宅地です。しかし100%舗装されているため、雨水が地面に吸収されない。この地域は恒常的に水不足となっており、雨水不足のために地下水もわずかしかないのだとか。ANDAでは雨水の90%は排水溝に流れてしまい、上水道用に利用できているのはわずか10%のみであるとしています。

地下水の水位も下がっており、給水用のポンプが水を汲めずに焼きついてしまう事態も、今年に入って既に15件。「発見が早ければ修理できるけど、そうじゃなかったら交換になっちゃうんだよね、はっはっは・・・」ということらしい。さすがお役所仕事。

当然取水量も減少しているわけですが、減少している理由はそれだけじゃなくて、取水プラントの修理や改修が必要なケースもあるようで・・・、すごいなお役所仕事。ちなみにサンサルバドル県の需要毎秒4.4立方メートルに対し、ANDAは通常5.9立方メートル、現在は5.4立方メートルを供給しているのだそうです。

私がサンサルバドルにいた20数年前は、水道水はほぼ毎日数時間出ていましたが(時々出ない日あり)。ただし、出る時間が決まってなかったので結構不便だったんですよね。今はどうなっているんでしょう・・・。エルサルバドルからグアテマラに来た時、まず感心したのが「水がほぼ同じ時間に出る」ってことでした。場所によっては週数日とかあるわけですが、一応時間が決まっている。もっとも供給場所の切り替えは手作業であるらしく(グアテマラシティなんかは自動でやってそうですが)、時々イレギュラーになることも(笑)。以前部屋を借りていた家は、週3回、しかも深夜にしか水が出ないってところでして、水が出ている間に水を貯めておくのは結構大変だったんですよね。

エルサルバドルからグアテマラに引っ越した1994年はやっぱり水不足の年だったようで、部屋を借りていたテクパンでは計画停電も行われていました。他の自治体でもやってたんでしょうか?グアテマラで計画停電に遭遇したのは、あの時一度きりです。

水不足を「温暖化現象のせい」というのは簡単ですが、降雨量の減少は今に始まったことではないですし、エルサルバドルのように小さな国土に人がひしめき合っているところでは、水不足はかなり以前から深刻だったのではないかと思うのです。現在井戸の掘削で供給源の確保を図っているようではありますが、それが根本的な解決にならないことは自明の理。雨水の有効利用と森林の再生はやっぱりはずせないんじゃないの・・・と素人ながら考えるわけですが、どうなのでしょう。

今日の非常事態宣言とともに、首都圏ではオレンジアラートも出されたそうです。さて、グアテマラはこの時期をうまく乗り越えられることができるだろうか・・・。

ユリッタのコラムと水資源

昨日のエントリー中、中央公園の最後の改修工事のリストの「都市計画班(Unidad de Planificación Urbana)」のトップに、建築士アルフォンソ・ユリッタ・クエスタの名前があります。

アルフォンソ・ユリッタと言えば、グアテマラの都市問題がテーマになる時、必ず登場する重鎮です。当時はグアテマラシティの都市化計画を担当していたのかもしれません。もう年齢的には第一線を退いているのかもしれませんが、一方ご意見番としてPrensa Libre紙に毎週月曜日コラムを書いていらっしゃいます。

今日4月11日は「汚染された世界(El mundo contaminado)」というタイトルで書いています。オスカル・ベルシェが市長だった時(90年代後半)に空いている土地の利用を認めたことに端を発する無制限な看板の洪水(うん、これはいい加減ちょっとうんざり)という視覚的公害とか、急増する人口の前に無策だった都市化に起因する公害とか、お説ごもっとも!!!な内容ですが、最後の方、Plamabagという単語が出てきて?となったのでありました。

Por lo que, en lo relativo al agua, para lo cual la población tiene la intención de desarrollar una manifestación el 23 de abril, en protesta. Para el Plamabag la situación de emergencia en el Área Metropolitana sería a través de pozos, tal como se hace ahora, pero no llegan a abastecer los 13.1 m3/sg necesarios para los cuatro millones de habitantes. Dura es también la situación del Lago de Amatitlán, hoy contaminado, que se consideró otra fuente para captar agua, así como al Motagua y otros ríos.
-2016年4月11日 Prensa Libre “El mundo contaminado”-

PlamabagはPlan Maestro de Abastecimiento de Agua de la Ciudad de Guatemala(グアテマラ市上水供給マスタープラン)の略で、文字通り、グアテマラシティの住宅にどうやって十分な水を供給するかという計画。人口増にあわせてどんどんどんどん改定されていっているのではないかと想像するわけですが。

現在グアテマラシティ及び首都圏の上水道は川及び井戸から供給されているわけですが、「首都圏400万人に供給するために必要な毎秒13.1立法メートルが確保できない状況となっており、水資源の確保は喫緊の問題である。かつてはアマティトラン湖も上水道用にと考慮されたことがあったものの、現在の汚染状況ではそれも覚束ない。モタグア川とかその他の川も同様である」。

一部の商業ビル、アパートは自前で井戸を持っていて地下水をガンガン使っていますが、それは一旦置いておくとして(農業用水なんかもそうですが、水資源は今のところ、誰でも勝手に利用して構わない資源となっているそうです)、この先どうやって水を確保するの?というのは切実な問題となっています。グアテマラシティ周囲の山は、住宅開発のために保護区以外の森林はもうほとんどない状態で、益々乾燥していくし・・・。かと思うと雨季になれば街は水浸しになったりするわけですが。

ちょっと昔の資料などを見ていたら、2001年にやはり「もう水が足りない」なんて書かれた資料がありました。これによれば、10年前には50mも掘れば水が出てきたのに、今は400m掘らないといけないと書かれてまして、15年前でこうなら今はひょっとして・・・?と考えこんでしまいます。その時既に、2010年には毎秒13立方メートルの水量が必要と予想されいたわけで、そのために井戸の掘削、上水管の増強などで対応していたようですが、根本的な対策ではないのは一目瞭然。

乾燥回廊上にあるこの地域も降雨量は減っているわけで、実は事態はかなり切実なのではないかという気がしています。そのためなんでしょうか、4月23日にはデモがあるらしい(と先ほどの引用で触れられています)。詳細は不明ですが、ちょっと気に留めておこうと思います。

乾燥回廊 (序)

セマナサンタ頃から急に暑くなり、いよいよ夏となったグアテマラです。3月、4月の暑い暑い時期を過ぎる雨の降り出す時期となり、気温も下がり、農民にとっては種まきの時期となります。

ただし、この暑い時期から雨が降り出してしばらくの時期というのは、小規模農家にとっては昨年の作物が底を付き始める時期でもあります。それでも例年のように雨が降ってくれればいいのでしょうが、ここ数年の天候不順で、収穫も決して望ましいものではなかったようです。

そうして発生するのが飢餓であり栄養失調。年少の子供が重度の栄養失調に陥り亡くなってしまうというニュースが、このところ毎年のようにこの時期に報道されています。

乾燥回廊(Corredor Seco)というのは、そういう降雨量の減少が住民の生活を脅かしているようなところのことです。グアテマラでは専ら東部の高温少雨地域を指しているようですが、中米乾燥回廊(Corredor Seco Centroamericano)というのはグアテマラのメキシコ国境付近からニカラグアのコスタリカ国境付近までずーっと続く地帯のことを指しています。

26105039732_8d5da02e55_o

この地図は国連食糧農業機関が2012年に作成した報告書「中米乾燥回廊の特徴に関する研究(中米4ヶ国)/ Estudio de caracterización del Corredor Seco Centroamericano (Países CA-4)」から取っています。

中米4ヶ国(CA-4)という場合、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグアの4ヶ国を指しています。コスタリカやパナマにも一部乾燥地帯があるのですが、この報告書では扱われていません。

上記の地図では、旱魃の程度の低いところが緑、高いところがオレンジ、深刻なところが赤となっています。グアテマラで一般に乾燥回廊と言われているのは、この旱魃が深刻な部分のことを言っているわけですが、他の地域も決して大丈夫というわけではないのですよね。

そしてまたこの乾燥地帯、人口の多い地域と重なっているようにも見えます。パンアメリカンハイウェイは乾燥回廊の中を通っています。

(すごい余談ですが、先日ソロラ県のナウアラで乗り合いバスがパンアメリカンハイウェイから崖下に落ち、多くの方が亡くなる事故があり、日本でも報道されていたのですが、「高速道路から転落」と記載されていて、そりゃ確かに「ハイウェイ」とは言うけれど、高速道路じゃないし・・・と思ったものでした。大体「パンアメリカン」というのも怪しい。誰が言い出したのか知らないけれど、いい加減「中米縦断道」くらいに呼び名を変えた方が良くないですかね。とか言いながら私も使ってますが)

天候不順による不作に起因する子供たちの栄養失調は、元大統領オットー・ペレスが重要課題として取り上げ、Hambre Zero(空腹ゼロ)というプログラムを立ち上げたのですが、最終的には他人のお腹よりも自分のポケットを一杯にすることに専念されていたようで、効果的な結果を出したとは言えません。

同時にこの課題はジミー・モラレス大統領が緊急課題として取り上げており、先日華々しく指針を発表しています。

というわけで、この旱魃と栄養失調について、この先も時々取り上げていきたいと思っています。明るいニュースが多くなることを願いつつ。

飢餓対策

ジミー・モラレス大統領が就任演説で最重要課題の一つとしてあげたのが、グアテマラの子どもの半数以上が被っている慢性栄養失調の削減でした。

就任後1ヶ月半を経て、その最重要課題の指針が発表されたらしい・・・ので内容をちらりと見てみました。

ジミーさんが大統領である2016年から2020年の4年間で栄養失調を10%削減するという「全国慢性栄養失調防止戦略」がそれ。

その第一フェーズの対象となったのがウエウエテナンゴ、キチェー、アルタ・ベラパス、チキムラの4県の81市を対象、2018年の第二フェーズではトトニカパンとサン・マルコス、そしてソロラの57市。

肝心の実施計画はといいますと、保健ケアー、上水道の整備を縦軸に、そして食糧の確保、政府機関によるモニタリング。これを執行するのは全国食糧栄養安全保障審議会(CONASAN)。コナサンだけにちゃんと仕事をこなさんと、ってか。

プログラムのプレゼンテーションのために用意された資料はこちらで見られます。パワポで作ったんだと思うのですが、なぜかPDFでアップされてて重たいです。おまけに一ヵ月半かけて作ったのはこれなの?と正直思ってしまう内容。いえ、きれいなのはいいんですけれど。

とりあえずはお手並み拝見・・・と言いたいところですが、ジミーさんは市民参加を求めてるので、高みの見物をしていてはいけないのかもしれないです。

政府機関が複数係わり、おまけに市民参加とかなると、いろいろと複雑すぎて迅速に対応できるのかしら・・・、例によって汚職は大丈夫なんだろうか・・・などと思わなくはないですが、前政権も同様に重要課題としていたくせに途中で放ったらかしにしてしまったこの飢餓対策、今度はぜひ前に進めていって欲しいと切に願っています。