Category Archives: アブラヤシ

ジェノサイド裁判、再び再開

エフライン・リオス・モントが大統領だった1982年から83年に起こったイシル地方の虐殺事件については、2013年に裁判が開始、同年有罪として懲役80年の判決が出たものの、裁判手続きに不備があったとして無効、再審となり、昨年この再審が始まっていました。

ところが、この再審が進んでいたところで、また裁判が無効をなることを心配した原告側が憲法裁判所に保護請求をだし、リオス・モントともう一人の被告ホセ・ロドリゲスの裁判を別々に行うよう申請していたのが認められ、やっとこの再審が再開したという次第です。別々になったとは言うものの、裁判手続きそのものは同時に行われています。証人は同じですしね。

91歳のリオス・モントは健康状態が思わしくなく、顔を見せていません。証言をすることもできなければ、有罪になったとしても刑務所へ行くことはないでしょう。娘のスリィ・リオスは「原告は金が欲しいんでしょ」と決めつけていますが、それよりも求めているのは正義でしょう。多くの人が残酷に殺されていったのはなぜか、どうしてそうなったのか。何よりもまずそれをはっきりさせて欲しいと、何年もかけて訴えていました。

この裁判は非公開で行われているので、様子はわかりませんが、本日は原告被告双方合わせて弁護士3人が退席を求められたそうです。どんな凄まじい裁判なんだか。。。

リオス・モントに関する過去のエントリー
はこちらでご覧頂けます。

環境省、大手7社を訴える

5月9日、環境省長官のシドニー・サムエルズは、「(コスタスールの)川の水を引き込んで流れを変えた」としてアブラヤシやサトウキビなどの農場を経営する7社を検察に告発したことを明らかにしました。

告発されたの次の7社。

  • インヘニオ・マグダレーナ(Ingenio Magdalena, マリオ・レアルさん所有のサトウキビ農場)
  • グルーポ・ハメ(Grupo Hame, お馴染みウーゴ・モリナさん所有アブラヤシ農場)
  • インヘニオ・ラ・シエラ(Ingenio La Sierra, サトウキビ)
  • インヘニオ・パンタレオン(Ingenio Pantaleón(エレーラ一族が所有するグアテマラ最大のサトウキビ&製糖業者)
  • インヘニオ・パロ・ブランコ(Ingenio Palo Blanco, サトウキビ)
  • フィンカ・ラ・バナネラ(Finca La Bananera, バナナ)
  • パルマス・デ・オリソンテ(Palmas de Horizonte, アブラヤシ)

川の水を自分の農場に引き込み、下流域の水を涸らす原因となった、ということのようです。対象となっている川はマードレ・ビエハ、パカヤ、ナウアラテなどで、川の引き込みは50ヶ所以上確認されているそうです。

告発の根拠としているのは憲法127条。憲法なのかいっ!とちょっとびっくりというか、他に根拠にできるものがなかったということなのでしょうか。曰く、「水について:すべての水は公有の財産である」、つまり共有財産であるが故に、誰かが一方的に利用することはできないと解釈しているらしい(ちょっと無理筋)。

訴えた相手はグアテマラ国内の財閥なので、これだけでは裁判になったとしてもうまくいかないような気はします。ただし、今まで何らアクションを起こすことのなかった環境省が動いていること、そして大企業をとりあえず訴えたことで、水の利用について一定の自制が働いてくれればいいのですが・・・。

水資源の利用に関する法案は次々と国会に提出されているようですが、この先成立するのかどうかはまだ不透明です。

とりあえずは環境省に喝采を送り、今後の法案と告発の行方に注目したいと思います。

持続可能なパーム油

アブラヤシの話のついでに、「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO: Roundtable on Sustainable Palm Oil)」についても触れておきたいと思います。

パーム油の生産が環境に影響を及ぼすことが危惧されるようになった今世紀初め、環境や生態系の保護とアブラヤシの栽培・パームオイルの生産の両方をやるんだ!ということで2004年に設立された組織です。円卓会議の推進者でもあるWWFが簡単な紹介ビデオ(日本語)を作っています。

RSPOは8つの原則を掲げています。

  1. 透明性へのコミットメント
  2. 適用法令と規則の遵守
  3. 長期的な経済・財政面における実行可能性へのコミットメント
  4. 生産及び搾油・加工時におけるベストプラクティス(最善の手法)の採用
  5. 環境に対する責任と資源及び生物多様性の保全
  6. 農園、工場の従業員及び、影響を受ける地域住民への責任ある配慮
  7. 新規プランテーションにおける責任ある開発
  8. 主要活動分野における継続的改善へのコミットメント

RSPOの条件を満たしたプランテーションはRSPO認証を得て、「法律遵守」で「環境に優しく」「従業員や周辺住民にも責任を持つ」アブラヤシ農園として売り込むことができるわけです。ふむ。

さて、では問題です。グアテマラのアブラヤシ業者の内、RSPOに加盟しているのは何社で、RSPO認証を得ているのは何社でしょう。

加盟5社で、認証を得ているのは2社のみ。この中にはいろいろとお騒がせなGrupo HAMEの名前はありません。

認証を有しているのはアグロカリベとナトゥラセイテスの2社になります。

アグロカリベはイサバル県モラレスにある会社で、認証ゲットは昨年8月。なお、RSPO認証は一旦取得したら終わり、というものではなくて5年ごとに更新が必要であるようです。

ナトゥラセイテはエスクイントラ県サン・ホセとイサバル県エル・エストールにプランテーションを有しています。カプーヨ(Capullo)という食用油はこの会社が製造している商品。コーシャー(カシェル)認証も受けており、ユダヤ人の皆さんでも安心してご利用いただける油がこれ。

一方、現在取得を目指しているRSPO加盟の3社はアグロアセイテ、ラス・パルマス、サンタ・ロサの3社です。

アグロアセイテはサン・マルコス、ケツァルテナンゴ、レタルレウの太平洋側に4817ヘクタールのプランテーションを有している会社です。1958年にバナナの栽培を開始、1998年のハリケーン・ミッチによる被害を受けた後アブラヤシの栽培に転向、熱帯雨林認証取得済み。

ラス・パルマスは1988年にアブラヤシの栽培を開始、エスクイントラ県ラ・ゴメラ市にプランテーションを有しています。各種石鹸を製造販売もしていたり。

サンタ・ロサはサンタ・ロサ県ではなくエスクイントラ県ティキサテの会社です。プランテーションの面積は11,400ヘクタール。

以上の5社が「環境に配慮している」アブラヤシ業者さんって言ってもいいのかな・・・。

グアテマラでアブラヤシを扱っている会社やプランテーションが一体いくつあるのかは不明ですが、2014年の時点でアブラヤシプランテーションの面積は13万ヘクタールで、グアテマラの農地面積の4%にあたっていたそうです。以上の5社合わせて、面積は3万ヘクタールほどでしょうか。まだ10万ヘクタールほど残ってますね。

折角こういうシステムがあるのだから、パームオイル生産者の方は是非参加して、責任ある企業として行動して頂けるといい・・・と思うのですが。いかがでしょう、HAMEさん。

エコサイドと司法(ラ・パシオン川の汚染)

2015年6月にラ・パシオン川で魚の大量死が発生した後、9月17日になってペテン県第三予備審理裁判所は「捜査のための予防措置として」Repsa(Reforestadora de Palmas del Petén, S.A.:ペテン椰子再植林会社)に6ヶ月間の業務停止命令を下した。しかし、同社その後一時保護措置を受けて操業を続けている。

まず、10月8日に処分取り消しを求める申し立てを行ったがこれは受け入れられなかった。そのため、同社はカルラ・エルナンデス裁判官の忌避を申し立てたものの、同裁判官自身がこれを却下。この後、この忌避申し立ては宙に浮いたままとなっている。そして10月25日、ペテン県高等裁判所は同社に一時保護措置を与え、業務停止命令を無効とした。12月23日、同高裁は地元住民グループらが同社の操業停止を求めて出した保護請求を却下した。

また、Repsaは憲法裁判所に2件の不服申立と2件の上申書を提出しており、この内の3件については同一の理由に基づき既に決定が下されている。予備審理裁判所は、環境省の告発に基づき、Repsaがサヤスチェの住民の日常生活権を侵害したとして、環境省に保護措置を与えた。しかし憲法裁判所は、政府機関である環境省に保護措置を与えることはできないとしてこの決定を覆した。
憲法裁判所の決定が下されていない上申書が1件残っているが、これが未決定である間、裁判所は審理を行うことができず、裁判は中断されたままとなっている。

ラ・パシオン川の魚の大量死の原因は未だに明らかになっていない。Repsaは5月には大雨により高濃度酸素溶解池が溢れだし、川を汚染したと一旦は認めた。しかし6月以降は繰り返し責任を否定している。

Repsaはアブラヤシプランテーションの環境アセスの手続きを終えていない。環境省から操業許可を得るために必要な保証金と環境適合許可証の支払いを行っておらず、法的認可を受けていないまま操業していたことになる。環境省によれば、同社は2006年に申請手続きを行っているものの、Q250万の保証金の支払いが行われていないためにペンディングとなっている。同省によれば、保証金は環境汚染などの事故が発生した場合の損害賠償に充てるためのものであるが、支払わないままになっていることが普通であるという。アブラヤシのように環境リスクが高いとみなされる業種では、保証金は高額となる。

また、許認可を得ずに操業した場合の罰金はQ5,000~Q10万の罰金と6ヶ月間の業務停止と規定されているが、環境省は罰金も業務停止も命じていない。環境省は同社に対する罰則の手続きを開始したものの、まだ完了していないという。

検察はRepsaの敷地内で何度か立ち入り捜査を実施している。捜査はまだ完了していないものの、同種の事件の場合、法的責任を負うのは企業の代表者、プラント責任者、管理人、工場長などの責任を追求する可能性があるという。この場合「有毒物質または環境に影響を及ぼす物質により汚染した」として懲役2年~10年と罰金Q3,000~Q10,000が課されることとなる。また汚染によりサヤスチェの住民に多大な影響を与えたとみなされた場合、刑事罰が加算される可能性もある。

グアテマラシティ9区4番街8-93。ここにある赤銅色のビルには、少し以前まではHAME、オルメカ、レヒアの事務所があると記載されていた。現在、社名は白いペンキで消されているが、周辺にはHAMEグループのロゴ入りの車が駐車している。

グループの名前は創業者ウーゴ・アルベルト・モリナ・エスピノサ(Hugo Alberto Molina Espinoza)のイニシャルに由来する。ペテン県のサヤスチェ、サン・ルイス、サン・マルコス県オコス、ケツァルテナンゴ県コアテペケ、エスクイントラ県、レタルレウ県、イサバル県、サカパ県など、国内で少なくとも46,000ヘクタールでアブラヤシの栽培を行っている。

モリナは1952年に綿の生産を開始、個人としては世界的な大生産者となった。1975年には食用油の生産を行うオルメカを設立、1982年にドレッシング製造のレヒア社を買収した。綿の暴落に伴い、1987年には綿からアブラヤシへと移行した。

Repsaはペテン県で生産されるアブラヤシから油の生産加工を担う会社である。商業登記によれば、Repsaには代表者が2人いる。カルロス・エンリケ・アレバロ・ガルシアとマヌエル・デ・ヘスス・エリアス・イゲーロスである。アレバロ・ガルシアは他の45社の取締役、社長、部長などに名を連ね、エリアス・イゲーロスは39社の代表や取締役を務める。その内4つの会社ではモリナ・エスピノサ、アレバロ・ガルシア、エリアス・イゲーロスの3人が取締役となっている。

HAMEが生産する食用油はオルメカというブランドで販売されている。その他にはクレミー(マーガリン)、マヨリバ(マヨネーズ)、モリーノ・デ・コシネロ(食用油)などがある。主要マーケットはグアテマラ国内であるが、中米及びカリブの他の国でも販売されている。

世界的にパームオイルの需要は高い。アメリカの農業省によれば、2015年の全世界の生産量は6200万トンであり、グアテマラは47万トンであった。HAMEはグアテマラ最大のパームオイル製造業者である。同社の従業員は22,000人であるが、半分がアブラヤシ、残る半分はバナナの生産に従事している。Repsa単独では従業員数は4,730人となる。

グアテマラのパームオイル輸出量は世界で第10位、ラテンアメリカではコロンビア、エクアドル、ホンジュラスに次いで4位である。アブラヤシ製産業組合の資料によれば、国内のアブラヤシ栽培面積は13万ヘクタールであるが、その内4万ヘクタールがサヤスチェにあるとされる。輸出額は2億508万ドルに上るという。グアテマラのアブラヤシは1ヘクタール当たりの収穫量が7トンと、世界平均の4トンを多く上回っている。生産に係わる費用は1トン当たり550ドルで、コロンビア(700ドル)よりも遥かに低くなっている。

HAMEの利益は公表されていないが、2007年のNGOらの調査によると、生産量は9万トン(市場価格1044億ドル)に上ると試算している。

HAMEグループの内、Repsaと関連10社は税制優遇措置を受けている。政令29-89号は、一次産品にかかる消費税の支払い免除と10年間の所得税免除を、また輸出業者及びマキーラ(繊維輸出)に対する関税免除を定めている。グアテマラでこの政令の恩恵を受けた企業は2000社以上に上り、Repsaに関連する10社のうち8社もこれに該当する。

更に、2015年7月まで、Repsaとオルメカはサント・トマス・カスティーヤ港の税制特区で操業していた。税制特区では10年間の所得税免除、輸入にかかる付加価値税免除、印紙税やその他関税が免税となる。

それだけの税制優遇を地を受ける一方、HAMEに対する告発は多々ある。環境汚染や森林火災、土地の不法占拠、固定資産税額の過小評価、最低賃金の未払い、時間外手当の未払いなどである。最低賃金の未払いといった労働者からの告発は、現在国際問題となっている。アメリカはグアテマラが労働者の権利の侵害を認めており、両国間の自由貿易協定に定められている公平な貿易競争に違反していると訴えた。労働条件の改善を求める労働者らに対し、2012年、当時労働相であったカルロス・コントレラスは「会社と話たところで、最低賃金を得られるのが関の山だ、とりあえず働ける場所があるということに感謝すべき」と言ったという。この国際労働裁判は、国債審判員の交代によりまだ決着がついていない。

そういう様々な紛争があるにもかかわらず、HAMEグループはあらゆる責任を逃れてきた。大資本を有するこの企業は、今でも裁判官や検察官に影響を持っているのである。

しかし、環境問題に詳しい弁護士は、昨年以降、裁判官や検察官が以前のような恐れを見せなくなっていることに期待を抱いている。検察の捜査は3月には終わる見込みである。巨大企業とその経営者らが裁判に直面しなければいけなくなるのかどうかは、やがて明らかとなるであろう。

 

*このエントリーは2016年2月11日付Plaza Públicaの記事“Repsa: El historial de una empresa investigada por ecocidio”を元にしています。

ラ・パシオン川の魚の大量死

ラ・パシオン川は、アルタ・ベラパス県とペテン県の県境に位置する山脈に端を発し、北へと向かってやがてメキシコとの国境線となるウスマシンタ川へと流れ込む川です。ペテンの低地をうねうねとゆったり流れていくこの川の流域にはマヤの遺跡も多く、古代から重要な川であったのだろうと想像します。

サヤスチェはこの川の流域にある一番大きな町です。現在このサヤスチェ市に住む住民の大半は、内戦時に他の町から逃れて来た人たちで、多くがケクチ族の人たちなのだそうです。この地に住み着いて土地を耕し、自給自足の生活を始めたわけですが、程なくこの地域にアブラヤシのプランテーションが入り込んだのでした。現在サヤスチェはグアテマラ国内で最大のアブラヤシ生産地となっています。

サヤスチェの人たちの平穏な生活が破られたのは昨年4月29日のことでした。ラ・パシオン川に大量の魚が死んで浮いているのが見つかり、大騒ぎとなりました。同市でアブラヤシの栽培とパームオイルの生産を行っているRepsa(ペテン椰子植林社)が、前日の大雨により同社のプラントの酸化池が溢れ出したことが原因だと発表したのですが、一方で、環境省と保健省は水のサンプルを採取してラボで分析。その結果、サンカルロス大学の毒物ラボが5月27日に「殺虫剤のマラティオンを検出した」と発表したのでした。

この騒動がそろそろ忘れられた6月6日。再び魚の大量死が発生します。この時は前回よりも大量かつ広範囲に被害が発生、なんと150kmもの流域で魚が浮いて死んでいるのが確認されたといいます。

地元共同体の要請により、環境省はRepsaその他のアブラヤシ生産業者の施設に立ち入り検査を行い、保健省は川の上流と下流で水のサンプルを採取しています(この時の検査の結果は公表されていない模様)。

川の近隣の共同体の48%が、生活水をラ・パシオン川に頼っていました。川の水を沸騰させて飲用とし、川で獲れる魚は毎日の食料としていました。衣類の洗濯をするのも、水浴をするのも、皆この川でした。しかしこの汚染のため、予防措置として川の水の使用が一切禁止されたのでした。

漁師は魚を獲ることも適わず、水は共同体にある泉に頼るか、救援物資のボトル水を使わざるをえなくなりました。

全国災害対策コーディネーター(CONRED)は、被災した共同体は17地区、今後影響を受ける可能性がある共同体は5地区あり、被災者は12,017人、今後被災する可能性がある人は14,827人と発表しました。

一方、検察は川の汚染について捜査を開始し、施設は捜査の間の予防措置として6ヶ月の操業停止を命じられました。このため、Repsaの従業員も生活に必要な収入を失ってしまったのでした。

ラ・パシオン川の汚染により、CONREDはペテン県全域にオレンジアラート、サヤスチェ市にレッドアラートを発出しています(現在は解除)。

川は誰のものか:ラ・パシオン川編

先日のエントリー「川は誰のものか」「川の拉致と解放(前)」「川の拉致と解放(後)」でコスタスールのマードレ・ビエハ川の水が付近の農場の取水のために枯渇してしまったという話を書きました。この時出てきたアブラヤシのプランテーションを経営しているHAMEという会社、この会社はOLMECAというブランドの食物油を生産しており、グアテマラ国内の他、メキシコや中米諸国にも輸出しているのだそうです。余談ですがこのオルメカの工場、私の家からそんなに遠くないところにあったりするのでありますが。

昨年4月と6月、ペテン県を流れるラ・パシオン川で魚が大量死するという事件が発生したことがありました。魚の大量死の原因として農薬説、川の中の酸素不足による説などがありますが、グアテマラらしいことに、未だに原因が確定していません(水中から農薬が検出されたのは事実ですが)。

ラ・パシオン川の汚染については現在検察が捜査中ですが、Repsaという会社が関わっているのではないかと言われています。このRepsaがHAMEグループに属するアブラヤシのプランテーション経営とパームオイルの生産を行っている会社になります。

南では地元住民の水を奪い、北では川を汚染して使えなくしてしまった。ラ・パシオン川は6月以降、漁はおろか、生活用水としても使用が禁止され、川に全てを頼っていた沿岸住民を難しい立場に追い込んでしまったのでした。雨季で雨量が増えた9月には川の利用が許可されるようになったそうですが、この事件を巡る顛末は、マードレ・ビエハ川の件よりも遥かに酷い。コスタスールで評判の悪かったアブラヤシ会社ですが、北では更に阿漕なことをやっているようだ・・・という話を、これからしばらく(多分毎日このテーマについて書くことはできないと思いますが)続けたいと思います。

ちなみに・・・。昔むかしのエントリーでアブラヤシについて書いていますので、よろしければご一読下さい。

川の拉致と解放(後)

(昨日のエントリーの続き)

HAMEの堰の破壊

「何だよこれは!」、 誰かが憤った。

「馬鹿にしやがって」、 別の男が怒鳴った。

「上っ面だけ繕いやがった。こんなことを約束したんじゃないぞ!」、 もう1人が叫んだ。

HAMEの取水口があるマードレ・ビエハ川のピナル・デル・リオ付近で、水に渇える農民らは憤りを隠そうとしなかった。

川のちょうど真ん中に、川の流れを2つに分ける堰が造られていた。右半分はHAMEの農場へ、左半分はそのまま川を流れてゆく。会社側は、これで住民との約束を果たしたと考えたのだ。しかし農民らはそのあまりにも明白なごまかしにすぐ気づいた。

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photo: Sandra Sebastián

HAME側の流れは水深約2mであったのに対し、反対側は膝までしかなかった。つまり、HAMEはこの地点で川の水の75%を得ているということになる。もちろんここより下流にある他の堰は、この計算には含まれていない。

同社のショベルカーが住民側の川岸の幅を広げるかのような動きをしていたが誰も騙されなかった。皆の怒りはみるみる内に増していった。

HAMEのホルヘ・エストラダは声を荒げることはなかった。トラブルが大きくならないようにと努力しながら、住民の抗議の声に逃げることもしなかった。ボディガードもおらず、退くこともできない状態で、責任を取れと迫る約100人の農民に取り囲まれたまま冷静さを保っていた。まるで映画の悪役を楽しんでいるかのようですらあった。顔を赤くすることなく、普段通りの低い声で話し続けた。プランテーションの取水口としてコンクリート舗装されている運河の部分は川が「自然に造ったもの」だと説明した。

農民の中には、エストラダの説得に納得する者も出てきた。対話が過熱したのは一度だけであった。ある若者がショベルカーについて、川底を掘るためではなく、水を分けている堰を壊すためにどうして使わないのか、と尋ねた時であった。

エストラダは答えた。「いや、私にはそう命令することはできないんだ。私の重機ではないので」。

「ふむ、お前のじゃないのか。じゃあ、これを俺らの物にすればいいのか?そしたらお前にやるよ」と若者は挑戦的に続けた。

「そんなことをしたら大変なことになるぞ」とエストダラは更に低い声で言った。

「ああ!ほら脅迫が始まったぞ」。

住民の中に、一際背が高く、一際体格が良く、誰よりも豊かな鼻髭を蓄えた人物がいた。この人物こそが市長のオットー・リマ・レシーノスであった。鍔の広い帽子をかぶり、革のブーツを履いた、官権力の化身とでも言うべき人物であり、まるで羊を前にした荒ぶる雄牛といった様子であった。しかしながら、この時点で彼はまだ決断を下せないでいるように見えた。ホルヘ・エストラダは彼に川の解放について、どのように手順を踏んで実行するかとい詳しい説明をしていた。明らかにそれは嘘であったが、まだ疑問を差し挟む余地があるように思えた。

住民らはそうではなかった。市長に行動を求めた。川に入り、川を隔てている堰に行けと、HAMEの取水口をふさげと言った。住民らは市長の巨体を取り囲み、要求し、圧力をかけた。しかし市長は躊躇った。しばらくの間迷っていたが、遂に決断した。

市長は川の中に入った。あっという間に川を渡ると、HAMEの堰に上った。ピストルを腰に下げたボディガード6人と、何人かの住民が市長に続いた。川岸に残った者はやんやの喝采をおくった。

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photo: Sandra Sebastián

市長とボディーガードはショベルカーに近づいて行った。風向きが変わったということにオペレーターが気づくのに時間はかからなかった。市長らは堰を壊し、HAMEの取水口を塞ぐようにと要求した。30分もしない内に、マードレ・ビエハ川を干上がらせていた最大の鎖は断ち切られ、アブラヤシのプランテーションは大量の水を失うこととなった。

HAMEの責任者は形ばかりの抗議をした。「技術的判断のないまま」実行すると、洪水が起こる可能性があると指摘した。しかし市長はもう彼の言葉に耳を傾けなかった。嬉しそうに叫んだ:「こうしよう、もし月曜日になっても十分な水がなければ他の堰も壊すことにしよう。ここでは住民が治め、住民が決断する。もし我々を逮捕するというのなら、喜んで逮捕されよう!」

住民らは市長を褒めそやした。市長は子牛を一頭屠殺してお祝いをしようと提案した。誰もが大きな戦いに勝利したと感じていた。もちろん、彼らがその場を離れた途端にこの重機が再びHAMEの運河を使えるようにするとわかってはいたが。中には興奮しながらも、不安を感じている者もいた。ドン・ウーゴ・モリナの水を奪ってしまったら、自分たちの生命が危険にさらされるようなことはないだろうか?そう声に出して言う者もいた。

 

サトウキビ業者の番

ピックアップ25台とバス1台は、今度はサトウキビ畑の中を埃を舞い立たせながら走っていた。サトウキビを満載したトラック、中には4台の貨物車を連結したものもあったが、ひっきりなしに行き来しており、機械仕掛の電車のようでもあった。ちょうど収穫と種まきの時期なのである。

サトウキビ業者の方がアブラヤシよりマシだ。と住民らが考えているのは事実だった。サトウキビは川の水をそんなに使わないと多くの住民が言っていた。おまけに、サトウキビ業者が社会的企業責任プログラムを実施していることは誰もが知っていた。

「サトウキビはとりあえず社会責任プログラムをやっている。もしアブラヤシがもう少し何かしてくれるんだったら・・・わしらは貧乏だし、必要なものはたくさんある。井戸とか、学校とか、それくらいやってくれれば、ウチでだって家畜が飼えるだろう。でも、全く何にもない。プロジェクトの1つもない」。川の下流に9マンサナの畑を持つマルコ・アントニオはそう言った。

今日は普段とは違う日である。川の解放の日なのだ。向かい風が吹いていた。親切だというイメージとは反対に、サトウキビ業者らもHAMEと同じ仕打ちをした。

一行はマンドゥリーア農場についた。パンタレオン、マードレ・ティエラ、マグダレーナといったインヘニオ(注:サトウキビ栽培及び製糖工場の総称)に向う運河はここから始まっている。この辺では川にあるのは丸くなめらかな石になる。サトウキビ業者らはマードレ・ビエハの流れを運河に向けるために、ここに小さな堰を造っていた。

住民らには二度考えることはしなかった。運河の取水口に石を積み上げて塞いだ。

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photo: Sandra Sebastián

サトウキビ業者の代表らは、不満を隠さなかった。

「こんなことをするのなら、対話は中止だ」、インヘニオ・マグダレーナのアブネル・ムニョスは言った。

ムニョスは取水量を半分にすると約束したと言った。先週までは1秒あたり1.5立方メートルの取水量を0.75立方メートルにしており、約束を守らないのは住民側だと非難した。そして川の流量を測り、誰がどれだけの水を使うかを決めるために技術的調査を含めて交渉を行う必要があると主張した。

現在までのところ、各自が堰を築き、欲しいだけの水を持っていくことができた。

他のインヘニオの代表の若者は名前を明かそうとしなかった。彼の顔には不満が現れていた。「こんなことは今までになかった」。マンドゥリル農園の取水には農牧省の許可を得ており合法である、住民らはオーナーの権利を侵害している、と言った。

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photo: Sandra Sebastián

おそらく内心では、ウチよりも多くの水を消費するアブラヤシのとばっちりを受けていると思っているのだろう。

彼は恐怖を隠そうとしなかった。「ヌエバ・コンセプシオンの住民はとても暴力的だ。復讐されるかもしれない。ここには90人とか100人とかの住民がいる。友好的な人もいるが、そうじゃない人もいる」。しかしこの日は誰も彼を手荒く扱うようなことはなかった。

そしてここには国のプレゼンスは全くない。環境省からも農牧省からも誰も来ていない。内務省もどこにもいない。

警官もいない。この激しい対立のどちらの側にも武器があるにもかかわらず、である。やって来たのは人権擁護局(PDH)のオブザーバー2人と大統領府人権局(COPREDEH)の2人である。しかし、いずれもとっくに引き上げていった。

「政府の立ち会いがあればありがたい。ここでは我々は孤立しているので」とHAMEのホルヘ・エストラダは言う。

実際のところ、環境省といった政府機関は住民からは拒否されている。15年間、水のない夏を過ごしていたにもかかわらず、彼らを守ってくれようとはせず、告発も進展を遂げなかった。この15年の間、当局は企業の側にいるようにしか見えなかった。

しかしこの時、川の中には政府のことを考える人物はどこにもいなかった。住民らは政府という父親に楯突く子どもたちのようであった。水を滴らせ、何かのゲームでもしているかのように、積み上げた石の堰の上に集まった。過去の負債がなくなったと感じていた。何年にも及ぶ戦いが、ここに実ったのだ。

今、川には以前よりも多くの水が流れている。しかし、全員の渇きは満たされていない。この下流にまだ壊すべき大きな堰があるのだ。

 

海へと流れる睡蓮

3つめの堰は堰というよりダムである。川の流れに沿って700mの長さ砂の壁が築かれ、川の流れをほぼ半分に分けていた。一方は海へと流れだし、もう一方はゆっくりとプランテーションへと流れていく。その流れがあまりにもゆっくりなため、水面には睡蓮が浮いている。囚われの水は農場のための貯水池のようである。どこの農場か?これについて、住民らの意見は一致しなかった。サトウキビだという者もいれば、バナナだという者もいる。ラス・アカシアス農場やラ・シエラ農場の名前が上がったが、水の行先について、これ以上深く考える者はいなかった。

確実なのは、これが最近できた物だということだ。その規模を知る者はそこにはいなかった。男性50人と女性1人がありいの行列のように連なって堰の上を歩いた。

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photo: Sandra Sebastián

「インディヘナの行列が、北に向かってるみたいだな」との声に笑いが沸き起こった。

約300m歩き反対側に出ると、ショベルカーが休憩していた。市長のボディガードの1人が、ピストルを仲間に預けると、川に入った。腕を広げて石の上を歩いて渡り、ほどなくショベルカーの上に乗ると休憩中のオペレーターと話し始めた。まもなく、鋼鉄の怪物は川縁に近づき、ゆっくりと川の深さを測るかのようにショベルを下ろしていった。

オペレーターが声が届くところまでやって来ると、市長は交渉を始め、話をまとめた。

ショベルカーは堰に近づくと、穴を開け始めた。突然壁が崩れ、囚われの水が解放された鳥のように自然の流れへと飛び出して行った。崩れ落ちる石の音はショベルカーの音さえもかき消していた。

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photo: Sandra Sebastián

まもなく農場のダムに流れができた。水は段々速度を増して開かれた穴へと向かっていった。濁り水の中で育った睡蓮が流れて行った。1つに固まり、浮島のように見えた睡蓮は割れ目を通った後はバラバラに分かれていった。それはまるで祭りのためにマードレ・ビエハを飾っているようにも見えた。その水は海へと向かって流れを速めていた。

 

追記

インヘニオ・マードレ・ビエハのマックス・セペダ技師の言葉とは裏腹に水は海へと到達した。トロチャ14の住民エルメル・ロドリゲスは現在の河口の水深は半分であり、住民らの井戸をマングローブ林を潤すためには十分であるとのことである。