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魔法の水事件判決

昨日19時に言い渡される予定だった判決は、結局今朝5時とか6時とか、そんな時間になったそうです。裁判官もお疲れ様だけれど、関係者の皆さんお疲さま。

さて、通称「魔法の水」事件。グアテマラシティの南にアマティトラン湖という、グアテマラシティやビジャヌエバ、ビジャカナレス、サン・ミゲル・ペタパ、サンタ・エレナ・バリーヤスといった周辺都市の下水というか汚水がどんどこ流れ込む湖があります。グアテマラの場合、自治体に下水処理施設というものが存在しておらず、各戸が浄化槽による処理をする程度。浄化槽が存在していない家、つまり、垂れ流しってところもまた多い上、家庭の排水に加え、下水処理をする義務があるはずの工場の排水すらも垂れ流し。

そりゃあなた、汚れない方が無理ってものでしょ。。。

Lago de Amatitlán

波も静かなアマティトラン湖ではありますが、雨季になるとゴミがわんさか押し寄せるのも、年中濁っていてなんだか臭いような気がするのも、むべなるかな。この湖、一部温泉が湧いていまして、マヤの時代にはこの周囲に集落があったことも確認されている上、湖の中から陶器も発見されているんですけれどねぇ。。。

そんなアマティトラン湖の浄化に乗り出したのが、愛国党政権。当時の副大統領ロクサナ・バルデッティ自らが指揮をとり、「アマティトラン湖の浄化と水質改善のため」に一般競争入札を行います。2014年11月、M.ターシック・エンジニアリングという会社が1億3780万ケツァル(約1800万ドル)でこれを落札。その中には「湖の水質を改善する」という23,000リットルの薬剤、つまり「魔法の水」が含まれていました。

その頃、この話がラジオで取り上げられていたのを覚えています。確かAMSA(アムサ、アマティトラン湖流域維持管理局、とでも言えば良いのかな)の人が出ていて、この「魔法の水」のことを話していたのですね。私が覚えているのは「もう何年もアマティトラン湖は放置されてきた、今回やっと何とかしようという動きが出てきたのだから、試させて欲しい」「この薬品は他の国(イスラエルではなかったか)で使われており、効果が確認されている」などと話をしていたことでした。リスナーが「一度に大量に購入するのではなく、最初に少しだけ買って試してみたら良かったのに」とメッセージを送っていたような。うん、これとってもごもっともな話です。

2015年バルデッティも参加して、華々しく「アマティトラン湖浄化のための魔法の水散水式」が行なわれました。バルデッティはこの時「私はこの湖について直接責任を負っているわけではないが、この湖が沼にならないよう支援している。浄化には30年必要だろう、今日がその最初の一歩だ」などと宣っておられたのでした。

一方、そんな上手い話があるわけがないと眉につばをつけた人たちは、大学に魔法の水を持ち込み、分析を依頼します。数大学が参加した分析の結果、この水の成分は「松、ニンニク、海藻の抽出物、過酸化水素水、エタノール」であることが確認されました。これで1800万ドルですよ、どこからどう見ても詐欺じゃありませんか!!!

そして実際詐欺だったのでした。化粧品もびっくりの脅威の粗利率だと思われるこの製品、早い話が利益は皆で分け合おう、という話になっていたのでした。そして逮捕されたのがロクサナ・バルデッティを含む13人。

ハイリスクC法廷で行われたこの裁判、バルデッティ以外は割と素直に罪状を認めていたような。そのお陰なのだと思いますが、バルデッティの抵抗にもかかわらず、裁判が割とさっさと進んだのでした。

さて判決。

  • ロクサナ・バルデッティ(副大統領):懲役15年半(共謀8年、詐欺5年、影響力行使2年半)
  • マリオ・バルデッティ(副大統領の弟):懲役13年(共謀6年、詐欺5年、影響力行使2年ー1日辺りQ100で減刑可)
  • パブロ・ゴンサレス:懲役12年8ヶ月(共謀7年8ヶ月、詐欺5年)、収賄については無罪、マネーロンダリングで再捜査命令
  • ホルヘ・かハス;懲役11年(共謀6年、詐欺5年)
  • マリリン・ソサ:無罪であるものの、マネーロンダリングについて再捜査命令
  • ルベン・トーレス;無罪であるものの、マネーロンダリングについて再捜査命令
  • エドビン・ラモス:懲役3年(義務不履行)、詐欺については無罪
  • フアン・ディアス:懲役12年8か月(共謀7年8ヶ月、詐欺5年)、収賄については無罪であるものの、マネーロンダリングで再捜査命令)
  • セルヒオ・マロキン:無罪であるものの、マネーロンダリングで再捜査命令
  • アラン・デ・レオン:懲役11年(共謀6年、詐欺5年)
  • リスベス・アロンソ:懲役12年8ヶ月(共謀7年8ヶ月、詐欺5年)
  • サンドラ・ガルシア:懲役12年8ヶ月(共謀7年8ヶ月、詐欺5年)
  • ウリィ・ロイトマン:懲役11年(共謀6年、詐欺5年、贈賄については無罪、マネーロンダリングで再捜査命令

3人が無罪、10人が有罪。バルデッティに対する求刑は懲役22年でしたから、それから比べれば刑期は3割減ですが、15年の懲役刑ならまずまずという感じがします。というか、減刑なしの懲役刑となったのは大きい。今後の汚職捜査についても、流れを作ってしまうかもしれません。

バルデッティ辺りはこうやって私服を肥やし、不動産を次々と購入していったのですね。それらの不動産は現在国有財産となっていますが、何にするんだろう?

こうして汚職政治家はちらっと浄化されていますが、かわいそうなのはアマティトラン湖。折角の浄化だったのに、蓋を開けてみればつまらないただの水。その後は誰も関わりたくないようで、完全に放置されています。

このままだと30年後には沼になっているんじゃ。。。