Category Archives: アルバロ・アルスー

最後の恐竜の死

数日前から「大統領が戒厳令を宣言して、Cicigのイバン・ベラスケスを追放する」という噂があったそうですが、それが本日にはボリュームアップしザワザワしていたのですが、大統領府の報道官がそれを否定して少しは収まったか。。。と思っていた本日17時過ぎ。

グアテマラ市長アルバロ・アルスーが心臓発作で倒れ、病院に搬送されたというニュースが流れました。そのしばらく後には亡くなったとの報道が。

やがてグアテマラ市が正式にアルスー市長が亡くなったことを発表しました。

グアテマラ市内のゴルフ場でラウンドを回っていたところ心臓発作を起こし、病院に運ばれたものの、到着時にはすでに亡くなっていたとのこと。1946年生まれの72歳でした。

アルバロ・エンリケ・アルスー・イリゴジェンはオリガルキーの一族に生まれた人でしたが、大学を中退して政治を志します。実際に政治に参加するようになったのは80年代のようですが、経歴を書き上げると:

  • 1986〜90年 グアテマラ市長
  • 1991年 外務省長官
  • 1996〜2000年 大統領
  • 2004〜2018年 グアテマラ市長

強力なリーダーシップを持った政治家でした。大統領になったその年に内戦の終結を告げるゲリラとの和平合意を結んだことは最大の功績と言えるでしょう。電気、電話などの国営企業を民営化を進めるなど、当時のネオリベラルの流れに乗った人でもありましたが、本来は保守。

グアテマラ市長としては、そのリーダーシップで様々なプロジェクトを進めて来ましたが、私的に有難いと思っているのは、過去の市長が成しえなかった新公共交通システムであるトランスメトロの導入と危険な地域と言われていた1区の歴史的地域(の一部)を安全な地域とし、人の流れを復活させたこと。特に1区では、それまで路上で商品を売っていた人たちを全て他の場所に移し、歩行者天国にしちゃったので、反対も反発も大きかったのです。それを進めることができたのは、アルスーの力があったから。

独裁者的であったとも言えます。人によって評価は様々ではあるでしょうが、先日亡くなったエフライン・リオス・モント同様、グアテマラの歴史に名前を刻んだ恐竜、じゃなくて人物であることは間違いありません。

昨年、Cicigと検察に汚職に関わっていたと指摘されて以降、反Cicig、親ジミーの姿勢を明確にしており、実際に政府を動かしているのはアルスーではないかとも囁かれていましたが、この先グアテマラはどうなるのか。いやはやまったく、大変な時にお亡くなりになったものです。

明日は国家宮殿にて終日通夜、29日の日曜日に市役所で葬儀がセレモニーが行われるようです。明日の夜はグアテマラ市主催の10キロレースも予定されており、例年アルスー市長が出発の旗振りをしていたのですが、レースそのものは中止されることなく、アルスーの記念レースとなるとのこと。私もこれに出走します。

市役所前では、アルスーを偲ぶ人々が花やろうそくを捧げたり、歌を歌ったり。こんな風に慕われるのは政治家冥利につきるのかもですね。

サモラの予言

エル・ペリオディコ紙社主のホセ・ルベン・サモラについては、以前にもチラリと触れたことがありますが、時折政局についても独自の見方を開陳してくれることもあり、サモラの言動には要注目だと思っています。

そのサモラの本日のツイート。

「この三週間の内にグアテマラで起こること:陰の大統領アルバロ・アルスーの影響下で政府が行うイバン・ベラスケスの追放。これには麻薬に関わる犯罪組織のバックアップがある」。

これは「予想される舞台と進行 (Escenarios y desarrollos previsibles)」と題した記事の一部ですが、この一部だけで掴みは十分すぎるほど。

サモラ曰く、

  • 3週間以内にCICIGコミッショナーのイバン・ベラスケスが国外に追放される。
  • 5月、汚職同盟は検察庁のコントロールを握る(5月には新検事総長が就任する予定)。それに伴い、暴力犯罪や暴動が増加する。重大事件の重要証人が暗殺される可能性がある。
  • 年の半ばにジミー・モラレスはお払い箱となる。その後を次ぐハフェット・カブレラ(副大統領)も6週間以内に同じ運命をたどる。
  • 次回選挙は前倒しで行われる。
  • アメリカからビザの取り消しや動産・不動産を差し押さえられる個人・法人が続出することが予想される。

何ともセンセーショナルな。サモラには情報源が多々あるので、いい線をいっているのだろうと思います。以前、ジミーがイバンを追放しようとした時にも警鐘を鳴らしていたし。

実際、政府のCicig追放の動きは執拗で、つい先日、外相が国連のグテーレス事務総長と会談しています。もっとも、2月1日に行われたらしいこの会談、公式会談ではないようで国連側からは事前にアポがあることは確認できたものの、その後一切声明なし。グアテマラ側からは、本日になってやっとこさ外相が「事務総長にCicigが内政にクビを突っ込むとクレームしてきた。両者でCicig見直しのための話し合いの場を持つことで合意した」と鼻高々に会見してましたが、さて。この人の言うことは信用できないんだよね。ジミー(と陰の大統領)がイバンを追い出したがっていることは誰もが知っているので、クレームつけること自体は驚かないのですが。一体どこのどいつまで、汚職とズブズブなんだよ。

その同じ1日、アメリカではラテンアメリカ歴訪を控えたレックス・ティラーソン国務長官が記者会見を行い、その中でグアテマラについて次のように触れています(全文はこちら)。

In Guatemala, we continue to support the CICIG – a UN body created in 2006 – to uphold the rule of law, strengthen accountability, and independently investigate illegal, corrupt activity affecting government institutions.

「グアテマラにおいては、法治国家の実現、アカウンタビリティーの強化、政府機関を脅かす違法または汚職に関する行為を独立して捜査することができるよう、引き続きCicigを支援していく」。

サムおじさんの言いたいことは明らかであります。

もう一方の当事者であるCicigは、本日次のようなツイートをしています。

「汚職は集団による最悪の病である。社会は一丸となって、公共の資源を消費する汚職と戦わなければならない。法が機能し、司法機関が強化された国。グアテマラ国民が選んだのは、そんな道である」。

そして台風の目、イバンのツイート。

汚職への戦いを呼びかけるフランシスコ教皇のビデオを引用し、「汚職には沈黙では戦えない!」と大文字で書いています。この呼びかけが人々に届くか。。。(何だかカトリック対エバンヘリコの宗教戦争になってしまいそうでもありますが)

サモラの予言が実現するのか。それともこの警鐘が功を奏するのか。

後者であって欲しいと、切に、切に願うのですが。

アルスーとリマ II

結局外務省は昨夜22時過ぎにCicigに「2段落目は取り消し」という内容のレターを送り、事なきを得たようです。それにしてもグアテマラのお役所って、日本のお役所並みに深夜まで仕事してるんですねぇ。。。

さて、「パンドラの箱」事件の予審が昨日から始まっていますが、それに関連して出てきたグアテマラ市長アルバロ・アルスーについて、少し書き進めたいと思います。

現グアテマラ市長アルバロ・アルスーと昨年獄中で殺害された囚人バイロン・リマ・オリバの関係は、1996年にアルスーが大統領に就任した時にさかのぼるのは以前に書いたとおりです。

アルスーと妻のパトリシアが乗馬を楽しんでいたところへ現れたペドロ・アロルド・サス・ロンピチの車を停車させようと、身を挺して夫妻を守ったのがバイロン・リマ・オリバでした。アルスーはこの時の出来事でリマ・オリバとホセ・オブドゥリオ・ビジャヌエバの2人に感謝し、信頼するようになったのでした。

1998年4月26日、グアテマラシティ1区にあるサン・セバスティアン教会でフアン・ホセ・ヘラルディ司教が殺害される事件が起こります。同司教は内戦時代の人権侵害行為を調査し、その2日前に「グアテマラ 二度と再び(Guatemala Nunca Jamás)」と題した報告書を発表していたため、政治的動機によるものではないかと疑われたのですが、捜査は困難を極めます。

長期間に及んだ捜査の結果、2001年、大統領府参謀本部(EMP)のバイロン・リマ・エストラダ大佐(退役)、その息子のバイロン・リマ・オリバ大尉、ホセ・オブドゥリオ・ビジャヌエバの3人が超法規的処刑(殺人ではなく)で、サン・セバスティアン教会の司祭マリオ・オランテスが共謀(証拠隠蔽的な)で逮捕、公判が開かれたのでした。

EMPというのは国軍の情報将校を多く抱える機関なのですが、そのせいかこの裁判を担当した検察官や判事は脅迫され、中には国外に脱出した人もいました。

そんな危うい状況下の裁判ではありましたが、リマ・オリバとビジャヌエバが現場にいたと言う証言などが最終的には有効とされ、被告4人には懲役刑の判決が下されます。

ただし、この4人がヘラルディ司教に直接手を下したと判断されたわけではありません。リマ・オリバとビジャヌエバは事件現場の偽装を行っていたとされたのであって、実際に司教を殺害したのが誰か、背後には政治的な理由があったのかどうか、その辺りはうやむやになったままでした。

「パンドラの箱」事件は、その半ば忘れられていた事件に再び日の目を当てることとなりました。この事件の摘発のきっかけとなった重要証人アレハンドラ・レイエスの先行証言(の一部だと思いますが)が昨日の予審で公表されたのですが、その内容はヘラルディ事件にアルスーが関与していたことを匂わせるものでした。

アレハンドラによれば、バイロン・リマ・オリバは死に先だつこと2ヶ月前、「(ジェラルディ事件の)事件現場を工作するようにと自分に命令したのはアルスーだった」「それはアルスーの息子のためだった」と告白したのだそうです。

アルスーの息子というと前妻との間に2人、現在の妻との間に1人いるのですが、この「アルスーの息子が関わっている」説は今回が初めてではありません。フランシスコ・ゴールドマンが2009年に出した「政治的殺人という芸術 (The Art of Political Murder)」という本で、実際にアルスーの息子の1人ディエゴ・アルスーが関わっていたと書いています。ゲイのディエゴは聖像などの窃盗に関与してのみならず、ヘラルディ司教に近いドイツ人司祭と性的関係にあった、と。

その当時は一部でしか話題にならなかった説でしたが、にわかに信憑性が増したかも?もっとも、検察も以前から捜査はしているようですが、物的証拠を見つけることができなかったのでありました。そしてビジャヌエバもリマ・オリバも故人となった今、それを証明することは不可能なんじゃないかという気がします。

アルスーの他の息子、ロベルトはもともとグアテマラのサッカークラブ、虚無にカシォーネスの運営に関わっていたのですが、経営困難のためにメキシコ人の売却、最近またクラブ運営に関わりたさそうな雰囲気を醸し出し、クラブのファンからの大ブーイングを受けていましたっけ。そして先月、ジミー・モラレス大統領から南米との通商促進のための名誉特命官に任命されていました。「家業促進のためだろ」と評判悪いです。そして現在の妻、パトリシアとの間の息子アルバロは国会議員。この2人は割とマスコミにも登場すること多いですが、ディエゴは中米議会議員と地味な役職にあります。

この事件の犯人がそうだったとして、実際に裁きにかけるのは難しいのではないかと思うのですが、リマ・オリバも何という置きみやげを残していったのかと。またアルスーはリマ・オリバを信頼していたのでしょうが、同時にものすごい弱味を握られていたことにもなるわけで。

ビジャヌエバは2003年に獄中で起こった暴動で殺害されているのですが、ビジャヌエバの妻はその後グアテマラ市役所の清掃員として仕事をしています。検察でパンドラの箱事件が公表された際、アルスーはこれについて「ビジャヌエバは殺されて頭を切り落とされ、奴らはその頭でサッカーをしたんだ、可哀想じゃないか。だから妻を市役所に採用したんだ」と話しており、アルスーって義理堅い人なんだなとその時は思ったのですが、暴動が起こったのは案外口封じのためだったのかもしれません。

リマ・オリバが殺されたのだって、ひょっとしたら。。。

なんて思わず想像せずにはいられないのでありました。

アルスーとリマ I

アルバロ・アルスーが大統領に就任して20日ほど経った1996年2月4日。この日、アルスーは妻のパトリシア、友人のリカルド・キニョーネスと共に馬に騎乗してサカテペケス県のサン・ホセ・デル・オビスポへと向かっていました。

内戦がまだ終結していなかった当時、大統領の身辺警護を請け負っていたのは大統領府参謀本部(Esatado Mayor Presidencial, EMP)でした。EMPはもともと内戦時代に防諜を目的として創設されたもので、メンバーは全て軍人、グアテマラのインテリジェンスに重要な役割を果たしてきましたが、同時に不当逮捕、拷問、処刑など多くの人権侵害に直接関わってきた部隊でもありました。

EMPは和平合意に基づき2003年に廃止され、大統領府総務警護庁が大統領の身辺警護を請け負うこととなりましたが、当初の構成メンバーは元EMPの軍人ら。現在は諜報・防諜活動は任務に含まれていませんが、例えばアルバロ・コロン大統領時代には大統領の執務室などに盗聴マイクが隠されていたなんてこともありましたし、あんまり信用できないのかもしれません。なお、汚職で逮捕されているオットー・ペレス・モリナ元大統領は1993〜1995年間でEMPのトップを務めていました。

アルスーらが乗馬を楽しんでいたその場にもEMPが警備に当たっていました。騎馬で警護に当たっていたのがバイロン・リマ・オリバ。リマの他は3台の車に分乗しており、道路を塞いでいたと言います。

そこに通りかかったのがペドロ・アロルド・サス・ロンピチ。サス・ロンピチは牛乳を売るためにピックアップカーでサン・ホセ・デル・オビスポからやって来たのでした。

それに気づいたバイロン・リマが停止を命じたものの、サス・ロンピチは停車することができずに馬をはね、更にEMPの車に衝突。サス・ロンピチが停車しなかったため、警備員が発砲、一人はタイヤを撃ったものの、もう一人はサス・ロンピチに発砲し、サス・ロンピチはその場で亡くなったのでした。

この事件で刑事告発されたのはサス・ロンピチに発砲したホセ・オブドゥリオ・ビジャヌエバ・アレバロ一人でした。超法規的処刑で告発されたものの、1998年1月に始まった裁判では単純殺人で有罪とされ、懲役5年と賠償金100万ケツァルの支払いを命じられます。現行の刑法では5年以下の懲役刑は金銭の支払いによる減刑が可能(1日に付きQ5〜Q100)となっており、ビジャヌエバは同年4月8日に釈放されました。

このバイロン・リマ・オリバとホセ・オブドゥリオ・ビジャヌエバの2人は、1998年4月26日に起こったフアン・ホセ・ヘラルディ司教殺人事件の犯人として再び登場することになるのですが、その話はまたあらためて。

黄金の猿の反逆

以前「汚職の反撃」というエントリーを書きましたが、Cicigと検察に名指しされたグアテマラ市長のアルバロ・アルスー、本格的な反撃を開始しています。

アルスー自身のアカウントはもちろん、グアテマラ市役所のアカウントも使っていたり。

こちらは名指しされた当日、検察庁で開かれた記者会見の後、市役所前に戻ってきた時のお言葉。これ、アップすることで市長のシンパが増えると思ったら大きな間違いじゃないかと思うのですが、きっとアルスー自身が「アップしとけ!!!」と仰せになったのでしょうね。

アルスーについてはエル・ペリオディコ紙が「mono de oro(モノ・デ・オロ/黄金の猿)」というあだ名をずっと昔に贈呈しており、不謹慎ながらもあまりにピッタリなので、SNS上ではそう呼ばれることも多い人です。もっともこの時の様子は内戦時の多くの虐殺事件の責任を問われている元大統領で軍人のエフライン・リオス・モントを彷彿とさせます。アルスーは古いタイプの政治家ですが、ひょっとして時代が変わったことを読めていないのかしら。。。

先ほどのSNSはグアテマラ市のものですが、本人や支持者らは検察庁関係の不正行為とか、そういうのを上げていたりします。昨日6日、スペイン語CNNでグアテマラ市役所のスポークスマン、カルロス・サンドバルが出演していたのですが(ご本尊はそんな下世話なものには出ないのですね)、その時用意していたのが、そういう第三者を上げて検察は汚いと指摘するネタ。もっとも途中で、プレゼンターのフェルナンド・デル・リンコンに「そういう根拠のない話はここで取り上げるわけにいかない」と叱られていましたが。このカルロス・サンドバルもアルスー的な、他人の言うことを聞かずに言いたいことだけ言うタイプのスポークスマン(しかも上から目線)で、やっぱり犬は飼い主に似る、のか。。。?

ただ、こういう類の反撃をすればするほど、Cicigと検察の言っていることの正しさを裏付けてしまっているような。本当に何もやましいことないなら、堂々としてればいいじゃん。そりゃ名門オリガルキー出身のお坊っちゃまには耐え難いことかもしれないけれど、それが法治国家ってものだし、公務員てのはそういう厳しい目にさらされる必要があるのでは。

グアテマラ市役所については、市役所が持っている3つの信託預金について、会計監査ができず、不正に使用されているのではないかという噂があり(会計検査院が告発しているそうなので、この件については既に捜査が行われていると推測)、こちらについては市役所も市長も準備をしていたのではないかと思います。それが思いがけない方からボールを投げられてしまったので泡を食っているように見える。

そして明日はアルスー市長支援というか反Cicig集会がCicig前で行われるようです。

シグロ21紙と言うのは、以前はペーパーで発行していた新聞でした。以前の社長のエドゥアルド・ゴンサレスがオットー・ペレス元大統領とロクサナ・バルデッティ元副大統領の汚職事件に関連していたとして逮捕され、現在は検察と司法取引をして重要証人となっている人物ですが、その後紆余曲折があり、現在はWebメディアとなっています。もともとは経済に強いメディアという評判だったのですが、今では官報以上に政府寄り、政府支持の太鼓持ちメディア、グアテマラの読売新聞的存在かも。

そのシグロ21がSNSにアップした「買い取りページ(Campo pagado)」。紙面では見かけるけれど、SNSで見たのは初めてだわ。だって、お金払わなくても自分でアップすればいいだけじゃん。謎だ。。。

呼びかけを行っているのはGuatemala Inmortal(グアテマラ・インモルタル/不死のグアテマラ)というグループ。このグループは、Cicigのイバン・ベラスケスへの国外追放命令を違憲と判断した憲法裁判所判事を「違憲」と告発しています。憲法裁判所の判事よりも自分たちの方が憲法には詳しいと思っていらっしゃるんでしょうね。。。

なお呼びかけは明日の12:30。グアテマラ市役所の職員には招集がかかっているんじゃないかと推測しますが、さて、これは公務なのか?それとも単に参加しないとクビなのか?

法的な告発なのだから、こんな場外戦を仕掛けなくても法的にきちんと戦えばいいでしょ。不逮捕特権剥奪請求されたのは何も初めてじゃないんだし。アルスーがカッカカッカとすればするほど、法曹らしく涼しい顔のCicigや検察の人たちとの好対照が際立つのが印象的です。

パンドラの箱

しばらく鳴りを潜めていたCicigでしたが、今日は遂にCicig砲をドカンと発射。それもまたジミー・モラレスへの容疑が霞んで見えるくらいの超弩級な爆弾でした。

もっとも、始まりは静かでした。朝の通勤時、ラジオのニュースで「Cicigと検察共同で数カ所で家宅捜索が行われており、弁護士のモイセス・ガリンドらが逮捕された」と言っているのを聞きました。ガリンドは元軍人&元検事で弁護士としては大きな刑事事件を幾つか扱っていたと記憶しています。オットー・ペレスの弁護もしていましたね。

その後、同じ事件でグアテマラ市役所の職員が逮捕され、グアテマラ市役所が家宅捜索の対象となっているとの報道も流れました。

さてさて何が出てくるのか。。。

詳細は昼過ぎに行われたCicigコミッショナー、イバン・ベラスケスと検事総長テルマ・アルダナの記者会見で発表されています。

まずテルマさんが「この事件は「パンドラの箱」と命名」と口を切ります。パンドラの箱!何が出てくるのか楽しみすぎます。

まず出てきた名前がバイロン・リマ。1996年にフアン・ホセ・ヘラルディ司教を殺害したとして懲役刑を受け、本年刑務所内で殺害された人物です。リマは2012年に愛国党政権となった時、当時の内務省長官マウリシオ・ロペス・ボニーヤから更生施設局のコントロールを頼まれ、更生施設局長と共に囚人の刑務所から別の刑務所への移送を請け負っていたとかなんとか。その見返りに車を受け取ったりしていたらしいのですよね。リマもロペス・ボニーヤもオットー・ペレス元大統領に近い軍人です。

まあでもここまでは、ありそうな話だと思うところです(よく考えたらあってはいけない話なのか?)。

その次に出てきたのが、リマが設立者の一人であるトーレ・フエルテ協同組合。この協同組合は刑務所内(!)で操業しており、Tシャツ作ったり、シルクスクリーンやってたりしたらしいのですね。もちろん労働者は囚人です。

そしてグアテマラ市役所がこの協同組合に発注していた。。。発注していただけであればともかく、これがグアテマラ市役所のためのものではなく、グアテマラ市長アルバロ・アルスーの市長選の選挙キャンペーングッズだったにもかかわらず、グアテマラ市役所の公金で支払われていたというのがこの日の爆弾。

この一連の話は結構いろいろからみおあっており、ひょっとして、ヘラルディ司教殺人にアルスーが関わっていたりとか!?と思わずにはいられません。週末にでも少し時間がとれれば、もう少し詳細に書いてみたい話ではあります。

アルバロ・アルスーと言えば正統なオリガルキー出身のクリオーヨ(白人系グアテマラ人、出自はスペインのバスク地方らしいです)、大統領をも経験したことのあるグアテマラの政界・経済界にスーパーパワーを持っている人物です。最近はジミー・モラレスのパトロン的立ち位置にいましたが、それはつまり、同じ穴のムジナってことだよねぇ。。。と思っていたのですが、まさかこんなにズバリ来るとは。

もっとも今日一番話題になったのは、この事件そのものよりも、この記者会見の席に登場したアルバロ・アルスーその人の方でした。どんな時でも主役を張ってしまわずにはいられないのは、正統派オリガルキーの血なのかもしれません。

右側がイバンとテルマのツートップ、左端にきっとして立っているのがアルスー。その前に居心地の悪そうな警備員が立っています。アルスーに歯向かって無事でいた人は過去にいなさそうですもんね。

記者会見の最後の方で、テルマさんはこのご当人を目の前にして「不逮捕特権剥奪の請求をする」と話し、実際今日の夕方に実行しています。

一方主役じゃないと気のすまないアルスーさんはと言いますと。。。

脳卒中起こすんじゃ。。。

と思われるような興奮ぶり。この方、いつも斜め下70度くらいに見下ろしている上から目線で話す人なのですが、この記者会見場及びその後市役所に帰ったところでこんなことを発言しています。

  • 「ここに来たのはあの2人の顔を見るためだ」(警備員から聞かれたテルマさんが入場を許可したそうです)
  • 「大統領を倒そうという新たな陰謀を自分が妨げたから、その仕返しをしているんだ」(捜査は1年前に始まっていました)
  • 「あのコロンビア人はノン・グラートだ」(流行には乗らないとね)

これはグアテマラ市役所がアップしているビデオ。記者会見場から市役所に帰ってきたところですが、市職員や信者も借り出されて、まるでカルトじゃありませんか。

確かに実行力もある政治家らしい政治家ですから、支持する人は多いのですよね。危険ゾーンと化していたグアテマラシティ1区の治安を改善したし、数々の市長が失敗していた公共交通手段(トランスメトロ)を成功させたし。

そのアルスーを本気で怒らせたCicigと検察はすごい。そしてこの後どうなるのだろうかと一抹の不安がよぎります。表だけではなく、裏の世界に通じている方だと思うし。。。

大統領と異なり、市長の不逮捕特権は控訴審の裁判官が判断を行います。実はアルスー、今年に入ってから「扇動」「食券濫用」だったと思いますが、それで告発され、不逮捕特権の剥奪請求が出されていました。

調査を行う裁判所からの出頭命令に、アルスーは弁護士を送って出席する意思を見せずに数ヶ月を過ごし。。。最終的には出席せざるを得なかったのですが、この時は「刑事捜査には相当しない」ということで決着しました。この人も口は災いの元の典型なんですよね。以前はそんなことなかったと思うのですが。

さてこのアルスーへの不逮捕特権剥奪請求について、地方自治体協会はアルスー支援の声をあげていますが、ジミー・モラレス大統領は自分を守ってくれた(アルスー曰く、クーデターから守ってあげた、のだそうだけれど)パトロンの危機に何か発言するんだろうか。今日はまた引きこもっていたようだけれど。

締めくくりはこれ。

昨日信任状奉呈したばかりのアメリカ大使ルイス・アレアガ、イバンとテルマとご歓談。
「アメリカ大使館は検事総長とCicigコミッショナーとの会合で、汚職追放のための戦いに対するアメリカの協力を確認した」。

仕事が早い。

さて政府はどう動くかな。ひょっとしてグアテマラ市役所は本当にイバンをグアテマラシティから追い出したりするんだろうか。

グアテマラシティだけにありそう、かも。。。