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トラベル・バン?

一昨日、アメリカのトランプ大統領が自身のツイッターでグアテマラを名指しで非難したとか。

「「安全な第三国」に合意したにもかかわらず、一方的にそれを破るとは。おのれ、今に見ておれ」。

えーっと、勝手に悪代官風に超訳してみました。そりゃグアテマラごときに内々に合意したはずのものをドタキャンされたら怒るわな。ご怒りごもっとも。

このトランプ大統領の怒りのツイートを見てビビったのがジミー・モラレス大統領だったらしい。公の場でメッセージを発する勇気がないジミーが何をしたかというと、メッセージの録画。これってCicigのイバン・ベラスケスをノン・グラートと宣言したあの時とかを彷彿とさせますな。

「うぬぬ、憲法裁判所のじじいどもめ。合意の内容を知りもせずに外交に首を突っ込むなぞ、余計なことをしてくれたものだ。アメリカさまとの関係がもし悪化するようなことがあれば、それもこれも皆、じじいどものせいじゃ」。

もっともこれについては憲法裁判所が「何をたわけたことを。合意を結んではいけないなどとは誰も言っておらぬ。国会に図ってから、つまりちゃんと手順を踏めと言っただけじゃ」と速攻で反論していました。

もっともグアテマラ中がてんやわんやの大騒ぎしていたとしても、コップの中の嵐くらいにしか思わないであろうトランプさん。

「グアテマラ人を入国禁止にしてやる!」

えっ。

どうやらコップに対して本気で怒っているようです。コップごときに舐てたまるか、ってこと?さすがにトラベル・バンは無理でしょって思うんですが、どうなんでしょう。ビザ発給停止ならともかく。

グアテマラ出身でアメリカ上院議員のノルマ・トーレスはこれに対しこんなツイート。

「ちょっとちょっと。無実の人たちを巻き込むことはないでしょ。汚職議員なんかをトラベル・バンにしたらいいじゃない」と心強い姉御っぷりを見せています。いや、トランプ大統領が耳を貸すとは思いませんが。

というわけで、この時代劇、どうやらまだしばらく続きそうです。落とし所はやっぱり関税かな?という気がするのですが、これってあまりアメリカにとってメリットがないような。CIA送り込んで傀儡政権を擁立する、みたいな古典的な手法はもう使えないでしょうしねぇ。

8月の大統領決選投票にはサンドラ・トーレスとアレハンドロ・ジャンマテイの2人の候補がいますが、どちらかというとサンドラが嫌米、ジャンマテイが親米であり、トランプさんがぎゃんぎゃん吠えれば吠えるほど、サンドラ勝利が確実になっていくのではないかと思います。サンドラが当選したら、アメリカとの関係は、一体全体どうなるんでしょうねぇ。

「安全な第三国」

グアテマラのジミー・モラレス大統領は、本日訪米してドナルド・トランプ大統領と「安全な第三国」協定に署名する予定でありました。

「安全な第三国」とは、アメリカへの難民申請を希望する人は、アメリカに到達する以前に第三国で行うこととするもので、早い話が大量の移民希望者がアメリカ国境へ押し寄せるのを阻止するのが狙いです。

お隣のメキシコは6月にアメリカと移民対策のための合意に至っていますが、これはグアテマラとの国境に6000人の兵士を送り込んで移民阻止を行う、これが成果を見せない場合は「安全な第三国」に指定する可能性を含んだものでした。実際メキシコは既に国境警備を強化しておりますが、これによって北を目指す移民の数が減ったのかどうかは、現在のところ不明です。

さて、グアテマラ。先週になって「来週ジミーが訪米するが、どうやら安全な第三国になるつもりらしい」というニュースが流れ、グアテマラ国内は選挙そっちのけでてんやわんやとなったのでありました。安全な第三国になるということは、グアテマラ国内に大量の移民が押し寄せて手続きの間滞在するわけですから、希望者のための住居、医療、教育その他、すべてグアテマラ政府が負担することとなります(ハコモノはアメリカ様が費用負担してくれるかもですが)。

国民の半数以上が貧困にあり、子どもの栄養失調が深刻な問題にあるグアテマラで、一体どこからそんなお金を出すんだ?というのは当然の疑問。

そういうことを事前に公表するつもりはなかったようですが、やっぱり悪いことはできないものでどこかから漏れてしまったのですね。当然批判は多く、憲法裁判所にはこの手続きは違憲だとする提訴が相次いで持ち込まれました。そして憲法裁判所は昨日(日曜日ですよ!)に「協定に署名する前に国会による承認が必要である」との判断を下しました。これを受けてジミーはトランプさんとの会談をキャンセル(これも昨日)。更にその日の内に、駐グアテマラ米大使のルイス・アレアガがワシントンに呼び出され、急遽帰国の途についた模様。

ジミーは大統領の椅子を守るためにも、ひいては将来のことも計算に入れてアメリカ様と良い関係を築いておきたいというわけで、自分と周囲だけで話を進めてしまったのでは。一国の長としては、特にあと半年未満で政権を譲る立場にある大統領としては、浅はかすぎてやりきれませんな。

アメリカはこの「安全な第三国」政策の推進に必死なようですが、メキシコも今日になって「ウチはやらない」と言っています。もっとも、アメリカとの国境付近での移民人口を考えると、メキシコは「安全な第三国」ではないとしても、同じような立場になってしまうのでは…。

アメリカに翻弄されるグアテマラではありますが、ひょっとして今回はアメリカを翻弄してしまったのかもですねー。それにしても、根本的な問題である貧困や治安といった問題に対する対策は一体どうなってるんだか。

ジープの行方

アメリカが「麻薬組織の取り締まりのために」とグアテマラにドネーションした軍用ジープを、政府がCicigやアメリカ大使館を脅すためにグアテマラシティをぐるぐると走り回らせたのは2018年8月のことでした。

その後、情報戦略庁のマリオ・ドゥアルテ長官が「ドネーションでもらったものはウチのものだ、どう使おうとウチの勝手だ。使い方が正しくないと言うんだったら、大使館の前に置いておく」とほざいたのは今年1月31日のことで、Return The Jeepsてなセリフがトレンディングトピックスに上ったのでありました(こちら)。

そして今日。アメリカ政府はグアテマラに対する軍事援助の中止を発表しました。理由は例のジープを本来の目的とは異なることに使ったため。タスクフォースへの物資支援・養成が中止となり、現在までの支援内容については、1件1件再調査を行うそうです。

現政権は元軍人が中心となっていますから、この決定は痛いでしょうね。大体グアテマラの場合、陸海空のいずれも、装備が貧弱なことこの上なしで、車両やヘリには結構アメリカからのお下がりが結構使われていますし、何よりもアメリカへ行って研修受ける、みたいなのができなくなっちゃうんじゃありませんかねぇ。

与党は、今年の選挙で次期大統領候補としてエストゥアルド・ガルダメス(現国会議員)を立てることを明らかにしていますが、この人は対ゲリラ戦用の特殊部隊であるカイビル隊の出身。軍人はアメリカの軍人と関係が深いことが多いのですが、この人は昨年アメリカの入国ビザの取り消し処分を受けています。そんな人が大統領になったら、対アメリカの関係はどうなるの・・・

それはともかく。さて、肝心のジープはやっぱりアメリカ大使館前に返却に行くんでしょうか。筋を立てるなら、アメリカまで送り返すのが正しいんでしょうが、まさか、ねぇ。まだジープ返せとは言われてないからって開き直るんだろうな。あるいは、盗まれたことにしてバラバラにしてパーツだけ使って別の車に仕立てるとか。。。

とにかく、ジープの行方が楽しみです。

沈黙の記憶の20年

今からちょうど20年前、1999年2月25日に真相糾明委員会(CEH)によるグアテマラ内戦時の人権侵害行為についてまとめた報告書「沈黙の記憶 (Memoria del Silencio)」が公表されました。

CEHはドイツ人クリスティアン・トムシャット(Christian Tomuschat)、グアテマラ人のアルフレッド・バルセルス、オティリア・ルス・デ・コティらが中心となった委員会で、生存者の証言を聞き、被害者が埋められている場所の発掘に立会い、4年以上の歳月をかけて総ページ数4,383ページにも及ぶこの報告書をまとめたのでした。

20年!早いものです。もはや内戦後ではない、と言いたいところですが、いまだに戦争犯罪での裁判が続き、国会では戦争犯罪に対する恩赦法が議論されており、20年以上を経ても内戦はまだ根っこのところで残っているのですね。本来なら、戦争犯罪に該当するものはさっさとキリをつけ、内戦後に踏み出したいところなのでしょうが、何と言っても被告側と目される人たちの方が力関係が強い。

そんな中で、証言を中心にまとめられた報告書には人権侵害行為の93%は国軍を中心とした政府機関によるものと記されており、その後「内戦に関わる犯罪」の裁判において証拠として採用されるなどしています。

その後、この日は「内戦による犠牲者の尊厳の日」と定められ、犠牲者の家族らによるデモ行進が行われています。参加者は少ないですが。

それとは別に、本日は「ラテンアメリカにおける真実委員会と国際司法」というテーマでのフォーラムが開催されておりました。前出のルス・デ・コティさん、ノーベル平和賞を受賞したリゴベルタ・メンチュさんらが登壇していたようです。

「私たちが求めるのは復讐ではなく、司法による正義、子供や若者が拷問されたり行方不明となったり、人種により辱しめを受けることのない将来である」(リゴベルタ・メンチュ)。

それが実現する時がグアテマラの「内戦後」なのでしょうね。

Return The Jeeps

アメリカ政府がJ8という軍用ジープをグアテマラ政府に寄贈したのは2016年のことでした。麻薬組織・犯罪組織取締用にと、グアテマラ国軍・警察の両者によるタスクフォース「チョルティ」が75台を受け取り、グアテマラ東部、ホンジュラス及びエルサルバドルとの国境を警備するためだったのですが。

この時はまだCicigと政府の関係良かったんですよね。

さて時は流れ、2018年8月。この時既にジミー・モラレス政府とCicigの関係は悪化して1年以上が経過しており、ジミーはCicigコミッショナーのイバン・ベラスケス追い出しに躍起となっておりました。この日は「Cicigの任期延長はしない」宣言をした日でありましたが、確かベラスケスは国連本部を訪問し、戻ってくるはずだったんですが、グアテマラ政府が一方的に「入国認めない」宣言を行い、それのみならずCicigやアメリカ大使館、アメリカ大使公邸などの付近にこのJ8がずらずらと並んだりぐるぐると走り回っていたり。

アメリカからのドネーションを、アメリカ政府関係者への嫌がらせに使うなんてアホちゃうか。

ちなみに、それ以前にJ8がグアテマラシティで何かの任務に付いていたことはありません。この時のデモンストレーションは政府からの指示により行われたものであったことは後に明らかとなっており、その後も度々グアテマラシティの一応レッドゾーン付近で散見されているようです。

さてさてまた時は流れ、本日。私が朝通勤時に聴くラジオ番組に、情報戦略庁長官のマリオ・ドゥアルテがゲストとして登場していたのですが、この方、きっぱりこう言ったそうです(私はその発言は聞いていないのですが)。

「J8はアメリカからのドネーションで、現在はグアテマラ政府のものである。だから、どう使おうとグアテマラ政府の勝手だ」「もしそんなに問題だというのなら、アメリカ大使館前に置いておく」「返せというのなら返す用意があるとアメリカ大使館に通知した」とまぁ、このジミー政権に多いあなた何様?な超上から目線。そういう発言は、自分たちでドネーションしてから言え、っつーの。

というわけでアメリカ下院の外務委員会。「もう二度とやらんわ(プンスカ)!!!」というセあリフが行間に滲んでいるような。

まったくもう、外交を子供のケンカレベルにしてしまってどうするんだか。

このような流れで、今日は#ReturnTheJeepsというハッシュタグがめでたくトレンディング入りしたグアテマラだったのでした。

平和と言えば、平和、なのか・・・?

政府とCicigの対立続く

私たちが日本に滞在していた間から、政府とCicig(グアテマラの無処罰に対する国際委員会)の間には相当不穏な空気が流れていました。休暇から帰ってきたCicigの調査員を空港で入国を認めずに強制送還にしようとしたものの、強制送還させるはずだったフライトが乗客の抵抗によりキャンセルされてしまって送還しそびれ、当人が空港に足止めを食らっている間に憲法裁判所が入国を認めるという判断を下して入国しちゃった、と思ったら今度は政府が「国連との協定を一方的に無視してCicigオシマイ、さようなら」と公に発言しちゃったり。

Cicigの期限は今年9月までなのに、どうしてそんなに急ぐのか、と言われれば今年は選挙の年だからなのでありましょう。一方、期間限定の協定については、一方当事者が相手の同意なく破棄できないのだそうで、これも憲法裁判所がノーと通告しています。

すると今度は行政庁が憲法裁判所の判事を「権限を超えて判断を下している」と最高裁に告発、憲法裁判所の判事には不逮捕特権があるのですが、最高裁はこの告発に相当な理由があると判断し、調査を命令。何とこの調査は国会が行うのですよ、そう、悪の巣窟と呼ばれているアソコですね。もっとも最終的には国会の採決で議員総数の2/3以上の賛成が必要となるため、訴追・罷免は相当に難しいと思いますが、波乱含みの選挙の年の幕開けです。

昨日からこういう政府に反対する大多数の人と、賛成する少数の人たち双方のデモが行われており、明日は国内各地で大規模な抗議が行われる予定となっていますが、肝心の国会は本日より警官隊が警備に当たっているそうです。何といっても明日は国会開会日だし大統領の演説があるんじゃなかったかな。さて、国会、ちゃんと皆、たどり着けるんでしょうか。

元大統領オットー・ペレス・モリナらの汚職疑惑などの裁判を担当しているミゲル・アンヘル・ガルベス判事がジャン・ジャック・ルソーの言葉を引用していたのですが、うむ、言いたいことはアレですよね、アレ。

「社会契約論」第三遍第4章からの引用で、「民主制」について書いているところです。ガルベス判事の引用は文の途中で切れているようなのでこの文章を全部書き写しておくと:

Nada es mas peligroso que la influencia de los intereses privados en los negocios públicos; y el abuso de las leyes de parte del gobierno es un mal menor que la corrupcion del legislador, consecuencia infalible de las miras particulares: entonces estando el estado alterado en su substancia, es imposible la reforma.

公務に私的な関心が影響を及ぼすことほど危険なことはない。政府による法の濫用の方が、立法者が私的な立場をとった結果として腐敗するよりもまだマシである。この場合、国家はその根本に置いて害を受けているのだから、改革は不可能である。

ふむ、大統領のご乱心には寛容にということなのか(おい)。あまり書くと、私も国外退去となりそうなのでコメントは控えておこう(笑)

例年、選挙は9月に行われていたのですが、今年は6月18日が大統領・副大統領、国会議員、市長、中米議会議員を選ぶ総選挙。大統領・副大統領については、この時に50%以上を獲得した候補者がなければ8月だったかに決選投票が行われます。

次こそはいい人が選ばれてほしい。。。というか、そんな候補者どこにいるんだ。

冬至の日に

同僚であり友人であった彼女は本日埋葬され、本当にもうこの世にいないのだなぁと、ジワジワと寂しさがこみ上げてきます。クリスマス前の金曜日にすべてを終えてしまうという辺りが、思いやりのある彼女らしいなぁなどと思ったり。もっともご家族はクリスマスを祝うどころではないのでしょうが。

さて。

先日、外務省がCicigに勤務する外国人11人のビザの延長を行わないので、当該人は72時間以内にグアテマラから退去するようにと発表していましたが、これに反対して憲法裁判所などに保護請求が何件か出されていましたが、本日憲法裁判所はこの外務省の決定を覆し、12時間以内にビザを発給するようにという判断を下しました。この「12時間」というのは、通知が外務省に届いてから、なのでクリスマス後になります。

もっとも、肝心の「外国人」たちはちょうどCicigも年明けまで休暇なので、皆さん国外にいるようです。というわけで、ビザを発給するのは無理だから、「発給します」という声明を出すことにでもなるんでしょうか。

やれやれ。。。

外務省が「ビザを延長しない」と発表した後、水曜日でしたか、Cicigコミッショナーのイバン・ベラスケスがCNNに出演していました。こんな形でイバンがテレビに登場したのは初ではないかと思いますが、この外務省の決定については「違法」だとバッサリ。

穏やかな口調ながらも怒っているイバン。でもこういう時にちゃんと表に出て、発言するのがリーダーというものです。

翻って、大統領は。。。最近まともな発言したことありましたっけ?いや、私がもう聞く気にならないからわかってないだけかもしれないけれど。あと1年もジミー・モラレスが大統領なのかと思うと、地味に鬱陶しい。それにしても来年の選挙はどうなるんだろう。いろいろと心配なのは事実です。

今日は冬至。この日を境に、少しずつではあっても、光が闇を照らし出してくれるようになることを願っているのですが。